「タケは歴史的前例を作った」契約延長の久保建英にソシエダ番記者が感服。一方で懸念する“最悪のシナリオ”とは?「何年も留まってくれるのを願っているが...」【現地発】

今を分析するには、後ろを振り返ることは有効な手段だ。いま起こっているすべての状況はどこから来ているのか、失敗から学ぶことができたのか、先入観や思い込みによって偏った見方をしていないのかを確認する。

その意味で、タケ・クボ(久保建英)はレアル・ソシエダにおいて歴史的な前例を作った。今夏の獲得候補として名前の挙がる選手を巡り、懐疑的な見方が出てきた時は、我々はタケに起こったことを思い起こす必要がある。

ソシエダは3度目の正直でタケを獲得した。前年のビジャレアル(後にヘタフェに移籍)に続いて、その2シーズン前にも所属したマジョルカとの争奪戦に敗れた2021年夏の時点で、タケに対して懐疑的な声はすでに存在していた。

アノエタに来ないことが分かった時、多くの人々は安堵のため息をついた。そしてその翌夏、約650万ユーロという控えめな金額と引き換えに契約を結んだとき、彼らの胸騒ぎは失望へと変わった。

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しかし評価が好転するのに時間はかからなかった。デビュー戦となったカディスとの開幕戦でタケは決勝点をマーク。ファンはすぐさま彼の競争心、クオリティ、単独で打開する力、パーソナリティの虜になった。マドリーで居場所を見出すことができず、レンタル移籍を繰り返していた選手が、これほどまでにスムーズに新天地に適応したことは特筆に値する。

「ラ・レアルは、サッカー選手としての自分の価値を証明することを手助けしてくれた。僕は良い時期を過ごしていなかったけど、成功に導く列車に乗せてくれた」

両者が築いた相思相愛の関係は、タケが口にする感謝の言葉に表れている。

タケは、ソシエダのクオリティを飛躍的に向上させた。1年目に9ゴール・9アシストをマークし、10シーズンぶりのチャンピオンズリーグ出場権獲得に大きく貢献した。

さらにそのピッチ上での文句のつけようのない貢献に加え、天真爛漫な性格、流暢なスペイン語を駆使しての歯に衣着せぬ発言も注目を集め、瞬く間にチーム屈指の人気者になった。
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そしてさらなる飛躍を期して臨んだ今シーズン、タケは最高のスタートを切った。その鮮烈なパフォーマンスは、レアル・マドリーのジュード・ベリンガムと並び称されるほどで、活躍に比例して移籍話が再燃する中、ホキン・アペリベイ会長は「我々の望みはタケが何年もクラブに留まることだ。そして個人レベルでもチームレベルでも目標を達成できれば、契約の延長話も出てくるはずだ」と願望を口にした。

まさに有言実行だった。水面下で交渉が進められ、ソシエダは2月12日にタケとの契約を2029年まで延長したと発表した。一方、タケは契約内容の詳細については明かさなかったが、「契約を更新したというのは、双方が合意し、満足しているということだ。僕も家族も幸せで、クラブも満足してくれている。それが鍵だった」と喜びを語った。

加入してから1年半の間に、大幅にチーム内での序列を高めたことで、一連の交渉において主導権を握っていたのは、タケサイドだった。それはサラリーが見直される一方で、契約解除金が6000万ユーロのまま据え置かれたことが物語っている。

タケの動向を追っている欧州のビッグクラブにとっては、リーズナブルな額であり、つまり今回の契約延長が流出に歯止めをかける決定的な役割を果たすことはないだろう。

移籍の噂はこれからも沈静化しそうにないが、周囲の喧騒をよそに長けは、忠実で愛情深いファンから慕われていることを感じながら、適切なタイミングで適切な場所に降り立った感謝を噛み締めてプレーし続けることだろう。

ソシエダにとって恐るべきシナリオは、ノルマである欧州カップ戦の出場得を逃した時だ。そうなれば、野心に駆られたタケが環境を変えるという決断を下したとしても不思議ではない。

アペリベイが強調したように、我々はタケが何年もソシエダに留まってくれるのを願っている。理想的な相思相愛の関係がこれからもずっと続きますように...。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

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