輪島の母娘、富山県砺波市で再起 水産物出荷を再開、23日に金沢の出張朝市参加

全国へ発送するカニを箱に詰める南谷良枝さん(右)と娘の美有さん=砺波市太田

 能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市の朝市で海産物の干物などを販売していた南谷(みなみだに)良枝さん(48)と娘の美有(みゆ)さん(22)が、富山県砺波市太田にある水産会社を拠点に出荷作業を再開した。南谷さんは「もう商売ができないと思っていたが、声をかけてもらい望みがつながった。いずれ輪島に戻りたい」と母娘の二人三脚で砺波から再起を誓う。

 南谷さんは、17歳の時に海産物を加工販売する会社を設立し、30年以上、輪島朝市の店頭に立ってきた。輪島フグの干物や塩辛が人気で、客との対話を大切に販売してきた。

 元日の能登半島地震で、輪島朝市の「朝市通り」が大規模火災に見舞われた。輪島市内の加工場は倉庫が傾いたほか、仕込んでいた約10トンの魚しょうのたるが約2メートル下に倒れた。「ほぼ駄目になってしまった。悔しい」と声を落とす。

 途方に暮れていた時、知り合いの水産会社「紅とら水産」(砺波市太田)の臼井和重さん(55)から協力の申し出があった。今月3日から出荷作業を始め、エビやカニを全国に発送している。

 12日は、南谷さん親子が仮住まいする金沢市から砺波市の作業場を訪れ、臼井さんと従業員がゆでて選別した金沢港の紅ズワイガニを箱詰めした。南谷さんは「地震で職をなくした人もいる。周りの助けもあり、目の前に仕事があるというのはとても幸せなこと」と前を向く。

 23日には、輪島朝市の復興に向けて金沢市で開かれる「出張輪島朝市」に参加する。美有さんは「能登半島地震と朝市を風化させないためにも、まず出張朝市を成功させたい。母から教えてもらうことや学ぶことがたくさんある」と張り切る。

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