犬は人の気持ちがわかるの?泣いていると、犬が近づいてくる理由

大丈夫? 悲しみは私にも伝わります

泣いていると、犬が寄り添ってくるのはなぜ?と、不思議に思ったことはありませんか? 話題の新刊『最新研究で迫る 犬の生態学』から、犬が抱える複雑なホンネをひも解いてみましょう。動物行動学の知見からすると、犬は笑い声よりも泣き声に敏感なのだとか。

★歌に合わせて遠吠えするのはなぜ?★

笑い声よりも泣き声に敏感に反応。 悲しみを感じて寄り添うことも

涙を流す飼い主の側に寄り添ったり、顔をなめたり。こうした行動はなぐさめようとしているわけではなく、見慣れない様子に動揺し、状況確認のために行っていると考えられていました。しかし最近の研究により、犬は人間の悲しみを感じ取っている可能性が指摘されています。

録音した赤ちゃんの泣き声と笑い声を拡声器で聞かせて反応を見る実験によると、犬は笑い声より泣き声が再生される拡声器の方を気にすることがわかりました。そこでさらに、飼い主と見知らぬ人が泣いているところ、ハミングしているところをそれぞれ見せる実験を行った結果、飼い主にせよ見知らぬ人にせよ「泣いている人」に近づくという結果が出たのです。

状況確認が目的ならハミングしている人にも近づくはず。泣くという行為を特別に認識していることから、悲しみの感情を感じ取っていると考えられます。

飼い主だけでなく見知らぬ人の泣き声にも反応

実験では、2人が泣いている姿(20秒)、2人がハミングする姿(20秒)、 2人のそれぞれの姿(下の4種)を、順番に犬に見せました。 見せる順番は、犬によってランダムに変更しました。

泣いている人に近づく

ほとんどの犬が「泣いている飼い主」「泣いている見知らぬ人」に近づきました。

状況確認ならハミングにも近づくはず。
また、飼い主だからという理由なら、見知らぬ人には近づかないと予想できます。

怖がっている飼い主は、ストレス。恐怖のにおいを嗅ぎ取っている

犬が人間の感情にどれくらい共感できるかはわかりませんが、感情を嗅ぎ分けることならできるといわれています。

2017年に発表された実験によると、怖い映像を視聴させ た人の脇汗を採取して犬に嗅がせたところ、心拍数が上昇し、うろうろと歩き回ったり頭を振ったりといったストレス行動が見られました。

逆に、楽しい映像を見た人の脇汗を嗅ぐと、不安や恐怖心が減ったのか見知らぬ人にも積極的に関わるように。嗅覚で感情を読み取っているといえるでしょう。

飼い主や仲間をお手本にして行動できる

犬は優れた嗅覚の持ち主。様々なものをにおいで判断しています。当然飼い主のにおいも大好きですが、たとえにおいに頼らなくても、飼い主のことは「声」だけで識別できることがわかっています。

飼い主と他人の声を聞かせて飼い主を当てさせるテストでは、8割を超える犬が正解しました。

この実験では、声の高さや低さ、大きさ、通りの良さなどを手がかりに飼い主を判別していると分析されています。

また、飼い主と他人の写真を見せながらそれぞれの声を聞かせる別の実験では、写真と声が一致しているときより一致していないときの方が、より長く見つめることがわかりました。飼い主から違う人の声がしたり、他人から飼い主の声がすることに矛盾を感じたため、注視時間が長くなったのです。

つまり、飼い主の声を聞いたときに、飼い主の顔をイメージしているといえます。声だけでも飼い主を感じられるなら、留守番中に電話や留守番用カメラ越しに話しかけることで、犬の寂しさをまぎらわせられる可能性もあります。

イラスト/さいとうあずみ

※この記事は『最新研究で迫る 犬の生態学』(菊水健史著 エクスナレッジ刊)の内容をWEB掲載のため再編集しています。


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