今も胸に…卒業式に歌った曲は?アンケートすると世代で「傾向」が あの定番に最近ではJポップも

6年生の合唱の練習(長野市・南部小)

特集は卒業式で歌った思い出の曲です。県内で最も歌われてきた「卒業式の歌」は果たして、何か?アンケートをしたところ世代によって「傾向」があることもわかりました。

■多様化 児童・生徒が選ぶ時代

ゆず「友~旅立ちの時~」(長野市・南部小)

体育館に響く歌声。まもなく卒業する南部小学校の6年生が合唱の練習に励んでいます。

曲は人気デュオ「ゆず」の「友~旅立ちの時~」。8つの候補曲の中から児童が選んだそうです。

ゆず/友~旅立ちの時~
♪「友 進むべき道の先に どんなことが待っていても…」

南部小・音楽専科・杉山哲夫教諭

南部小・音楽専科・杉山哲夫教諭:
「主人公は子どもたちですので、子どもたちが詩の内容に共感して自分たちの気持ちをのせて表現することが求められているのではないか」

卒業式で歌う曲も児童・生徒が選ぶ時代。多様化しているようです。

■10代 トップ3は

街で聞くとー

では、最も歌われている曲、歌い継がれている曲は何なのでしょうか。

松本市―。

10代:
「あれ、拝啓…手紙手紙!」

♪手紙~拝啓 十五の君へ~/アンジェラアキ
「拝啓 この手紙呼んでいるあなたは どこで何をしているのだろう…」

街の人に聞くとー

娘・10代:
「GReeeeNの『遥か』って曲が思い出に残ってます」

母親・40代:
「『仰げば尊し』定番で」

松本美須々ヶ丘高校の卒業式ではRADWINPSの「正解」を合唱(松本市)

長野市と松本市で「小学校・中学校の卒業式に歌った曲」を聞き、世代別でまとめてみました。(複数回答可、長野市と松本市の147人が回答)

10代の3位は「ゆず」の「栄光の架橋」。

2位は人気バンド「RADWINPS」の「正解」でした。

先日の松本美須々ヶ丘高校の卒業式でもー。

正解/RADWINPS
♪「あぁ 答えがある問いばかりを教わってきたよ そのせいだろうか 僕たちが知りたかったのでは いつも正解などまだ銀河にもない」

卒業生:
「半泣きで…歌詞を真に受けちゃって、感動していました」
「自分なりの『正解』を3年間で見つけてこられたな、みたいな感じで心の中で思って、最高です」

10代22人回答

そして、僅差で1位となったのは合唱曲「旅立ちの日に」。

♪「旅立ちの日に」

旅立ちの日に
♪「白い光の中に 山並みは萌えて 遥かな空の果てまでも君は飛び立つ…」

過去の卒業式のニュースの中でもよく登場しています。

■20代、30代のトップ3は

20代24人

20代も1位は「旅立ちの日に」。

2位は「大地讃頌」や「YELL」などの4曲。

30代25人

続く30代も「旅立ちの日に」が1位。

2位はかつての定番曲「仰げば尊し」でした。

街の人に聞くとー

「旅立ちの日に」を歌った人はー。

10代:
「全部心にくるんですよね。なので心に残っているし」

20代:
「(中学校で)3年間頑張って野球やってきた思い出を思い出しますね、歌っていると」

30代:
「だんだん(卒業式)近づくと、うるうるしながら歌って、当日は涙ながらに歌うので、聞こえなくなる部分も」

■40代~ トップ3は

40代20人回答

続く40代の1位は「仰げば尊し」。

他を引き離しています。

♪「仰げば尊し」

♪仰げば尊し
「あおげばとうとし わが師の恩…」

50代16人回答

50代も1位は「仰げば尊し」。

2位は「蛍の光」でした。

60代20人回答

60代も1位は「仰げば尊し」。

70代以上20人回答

70代以上も圧倒的に「仰げば尊し」でした。

80代:
「あおげばとうとし わが師の恩。当たり前のように『仰げば尊し』だったよね、『わが師の恩』でね」

世代別ランキング1位

アンケートの結果からは30代から下は「旅立ちの日に」、40代から上は「仰げば尊し」と二分されていることがわかりました。

音楽の教諭はー。

南部小 音楽専科・杉山哲夫教諭:
「『旅立ちの日に』はもともと、中学校の先生が作った曲。今までちょっと違った感じになっていて、その辺から変わってきたのかなと」

■卒業生へのプレゼント

6年生の合唱練習 ♪「旅立ちの日に」(松本市・寿小学校)

♪旅立ちの日に
「いま 別れのとき 飛び立とう 未来信じて」

長く歌い継がれている「旅立ちの日に」。

指導する教諭:
「『自分たちも飛び立つけど、ここにいる在校生も頑張ってね、僕たちも頑張っていくよ』という思いがある、この歌詞には。それをちゃんと伝えてください」

寿小学校の児童練習♪「旅立ちの日に」

松本市の寿小学校の6年生も、間近に迫った卒業式で歌います。

児童:
「6年間分の先生とみんなに感謝の気持ちを込めて歌っています」
「最後の繰り返すところ、『いま、別れの時』っていうところが、『これから旅立つよ』という感じがあって大好きです」

作曲した高橋浩美さんと当時の校長・小嶋登さん(故人)影森中学校

「旅立ちの日に」は埼玉県の二人の教師が1991年・平成3年に作った曲です。作曲者の高橋浩美さん(当時は音楽教諭)に話を聞くことができました。

作曲した高橋浩美さん:
「(全国で歌われているのは)本当に幸せだと思います。不思議な感じで、あの時だけだと思っていたが、どんどん広まって」

「旅立ちの日に」が作られた埼玉県秩父市立影森中学校に立つ石碑

歌は卒業生への「プレゼント」だったと言います。

作曲した高橋浩美さん:
「(当時は)荒れている学校がたくさんある時代だった。授業もできなかったし歌声が本当にさびしい状況。小嶋校長(当時)も『さみしいな』と。『歌声の響く学校にしよう』と学校目標の一つに掲げてくれた。年々、歌声が響くようになって、3年目の今ごろ、3年間子どもたちが、頑張ってくれたし、世界で一つしかないプレゼントしたいなと考えて、『そうだ歌を作ろう』と…」

校長の小嶋登さんが一晩で書き上げた歌詞に音楽教諭だった高橋さんが曲をつけました。

■「卒業式の歌」の定番に

「卒業式の歌」の定番に

「3年生を送る会」で教師たちがサプライズで歌ったところー。

作曲した高橋浩美さん:
「私たち的にはそこで終わりと思ったが、1、2年生が『僕たちも歌いたい』と」

その後、曲は混声三部合唱に編曲され音楽教諭向けの雑誌に掲載されました。

これをきっかけに全国に広まり2000年代、「卒業式の歌」の定番になったと言います。

作曲した高橋浩美さん:
「子どもたちにこの歌は『ありがとうの歌だよ』と言っている。自分を支えてくれたいろんな人たちに伝えたいという思いを持って歌ってほしい」

■子どもたちの心を捉える歌

アンケートではいわゆる「Jポップ」も歌われている

一方、アンケートからは10代、20代では「ゆず」「RADWIMPS」「いきものがかり」など、いわゆる「Jポップ」もかなり歌われていることがわかりました。

これは、冒頭で紹介した南部小学校のように子どもたちに選ばせるなど近年、児童・生徒の主体性を重視する傾向にあるからとみられます。

子どもたちはどういう基準に歌を選んでいるのでしょうか。

ゆずの「友~旅立ちの時~」の練習(長野市・南部小)

「ゆず」の「友~旅立ちの時~」を選んだ理由は?

南部小の卒業生:
「友だちとの絆への思いが歌にギュッと詰まっていていいなと。『再び会えるその時まで』と言うところが好き、この先、卒業してクラス替えとかしてもつながってるんだなというところが好き」

歌詞が子どもたちの心を捉えているようです。

卒業式のピークは3月15日

「旅立ちの日に」を作曲した高橋さんはー。

作曲した高橋浩美さん:
「少し前までは『旅立ちの日に』歌ってくれていたが、Jポップとかいろんな歌が出てきて、子どもたちが歌いたい歌を選曲するスタンスになっている。『僕たちの歌として伝えた』という気持ちが一番大事だから、時代の流れですてきなことだと思います」

県内の卒業式のピークは3月15日。この春も卒業生一人ひとりの胸に刻まれる「特別な一曲」が歌われます。

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