工事最盛期目前 ラピダスで変わる千歳

今週のけいナビの特集は、次世代半導体の量産を目指すラピダス。来年4月の試作ライン稼働に向け、今春から建屋の工事が本格的に動くとされる中、建設場所の千歳ではどのような変化が起きているのか探った。

千歳駅から1キロほど離れた高架脇の敷地。見慣れないものがずらりと並んでいた。北海道ジェイ・アール都市開発が設置した移設可能なコンテナ型宿泊施設「JRモバイルイン千歳」だ。

中に入ってみると、テレビにベッド、電子レンジ、冷蔵庫、流し台、さらにはWi-Fiまでが完備された快適な空間が広がっていた。宿泊料は1泊1万円ほど。長期滞在にも対応できることから、ラピダスの工事に関わる企業からの問い合わせが寄せられているという。

製造したのは、建築業のアーキビジョン21(千歳)。コンテナ型宿泊施設は最大で4階建てまで設置可能で、外断熱工法を採用した木造建築物であることから、断熱性はもちろん気密性にも優れているという。

現在、ラピダス関連の工事を受注した企業からの引き合いが非常に多く、630人が居住できる施設を建設しているところ。需要は増え続ける一方で、さらなる増設を見込んでいる。

一方、工場稼働後を見据えた動きも。ラピダス関連の従業員を想定した共同住宅の整備も盛んに動き出している。市によると、今年度の建築確認申請件数は約40件の見通しで、昨年度の2倍以上になるという。

ラピダスの工場稼働後は、ビジネスで千歳を訪れる人も増えるとの見立てから、ホテルを増築する動きも出ている。ホテルクラッセステイ千歳を運営する日動(札幌)は、新たなマンションやホテルを今後、千歳市内で建設する可能性にも言及する。

国道36号と中央大通に挟まれた北信濃地区の一画。フランスベッド北海道工場があった場所では今、大規模な商業施設の整備が進む。定住人口の増加を見据え、食品スーパーのダイイチやホームセンターのDCM、サツドラ、無印良品といった店舗が入る商業棟ができることが決まっている。

工場の工事が最盛期を迎えようとする中、近隣の自治体の期待も高まっている。厚真町では工場まで車で30分という好立地を売りとした大規模な宅地造成が始まろうとしている。既に苫小牧や千歳で働く人が町には多く定住していて、利便性の良さをさらにPRする方針だ。

恵庭は、工業団地造成の必要に迫られている。このほど道内外の半導体関連企業4000社を対象に行った調査で、約30社から「工場進出の可能性あり」との回答を得た。市の担当者は「どれぐらいの規模の工業団地をいつまでに設けるか、スピード感を持って協議する」と話す。

今回、ロケで千歳を訪れた日本経済新聞社札幌支社の高尾記者は、「各自治体がそれぞれ単独で事業を進めるのではなく、連携しあって対応する必要がある」と強調。そうすることが「ラピダス効果」を押し上げることにつながるとの考えを示した。

(2024年3月16日放送、テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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