警察官の男性保護は「違法」福井県に33万円賠償命令 福井地裁、精神錯乱判断に合理的根拠なし

 精神錯乱状態だったとの理由で福井県警福井署員に保護されたのは違法だとして、福井市の40代男性が福井県に対し、国家賠償法に基づく143万円の損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが3月13日、福井地裁であった。加藤靖裁判長は、男性が精神錯乱状態にあると判断したことに合理的根拠はなく保護は違法とし、県に33万円の賠償を命じた。

 判決によると、福井署は2021年9月、男性の近隣住民から「(男性が)迷惑行為はやめろ。拡声器で大音量を出すのはやめろと大声で怒鳴りつけてきた」と通報を受けた。駆け付けた署員が事情聴取し「うるさいっていろんなお宅にいっているでしょう。でもうるさくないんですわ」と話すと、男性は「うるさいです。警察が指導していないからです」と答えた。このやりとりの直後、男性を保護した。

 男性側は「警察官との会話に異常な点はない」、県側は「数年来、騒音トラブルが継続しており、その都度、近隣住民らに昼夜怒鳴り込む言動を繰り返していた」と主張していた。保護時点で男性が精神錯乱の状態にあり、他人の生命や財産に危害を及ぼす恐れがあったかなどが争点だった。

 判決理由で加藤裁判長は、男性は署員に保護されるまで声を荒らげることなく質問に回答し、会話は成立していたと指摘。事情聴取から保護されるまでに1分ほどしか経過していないことから、署員は通報の原因となった音を十分に確認できておらず「精神的異常があると合理的に判断できる事情はなかった」とし、男性を保護した署員には過失があったと結論づけた。

 県警監察課は「判決内容を精査しているのでコメントは差し控える」としている。

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