見た目はおいしそうな卵サラダパン、でも口に入れると－。兵庫県赤穂市加里屋中洲6のパン店「あこうぱん」が、赤穂署からの依頼を受け、特殊詐欺の被害防止を呼びかける特製パンを生み出した。その名も「サギパン」。食べてびっくり、外見からは想像できない味付けで、「誰でもだまされる可能性がある」（同店）。斬新なアイデアで詐欺の怖さを訴える。販売は31日まで。（小谷千穂）
■巡査部長の熱意に打たれて快諾
あこうぱんは赤穂義士1人ずつをモチーフにした「アコウバーガー」や、赤穂の食材を使った創作パンなどユニークな商品を開発し、市内外から人気を集める。サギパンを作ることになったのは昨年10月、同署刑事生活安全課の高浜健太郎巡査部長（35）が同店を訪れ、コラボを持ちかけたのがきっかけ。鈴木誠社長（53）が詐欺防止に力を注ぐ高浜巡査部長の熱意に打たれて快諾した。
同署からの要望は「自分は引っかからないと思っている人ほどだまされやすいことを知らせるパン」。鈴木社長は「食べたら誰かに紹介したくなる仕掛けにしよう」と、妻の美都（みやこ）さん（48）と頭をひねった。
完成したのは卵サラダパンに似せて作った甘いクリームパン。ゆで卵をマヨネーズの代わりにカスタードクリームと混ぜ合わせ、切り込みを入れたバターロールにはさむ。上からパセリのように細かく刻んだピスタチオを振りかけた。
容器にはQRコードを記し、スマートフォンで読み込むと、赤穂署の特設サイトにアクセスできる。クロサギのキャラクターが登場し、還付金詐欺やキャッシュカード窃取の手口を説明。非通知設定の電話に対し音声メッセージを流すなどの防止策も紹介している。
同署によると、県内では昨年1年間の特殊詐欺の被害総額が約19億9千万円（前年比約8千万円増）に上った。高浜巡査部長は「いつも通り食べてだまされるサギパンのように、誰でも普通に信じてしまうのが特殊詐欺。常に疑う心を持ってほしい」と訴える。
鈴木社長は「食べて驚いて、多くの人の心に残ると確信している」と話した。平日は1日10個、土日祝日は同40個の限定発売。税込み216円。月、火曜休み。あこうぱんTEL0791.42.3565
