特殊な構造を持つオスプレイ、飛行再開へ 頻発するトラブルへの防止策は…リスクを抱えた見切り発車との懸念は拭えず

奄美空港に飛来した米海兵隊のMV22オスプレイ=2023年12月2日、奄美市笠利

 防衛省と在日米軍が14日以降、日本に配備する輸送機オスプレイの飛行再開に踏み切る見通しとなった。昨年11月に屋久島沖で墜落した事故原因は明らかにされないままだ。米側はこれまで頻発したトラブルとは異なる「特定の部品」の不具合とするが、主な再発防止策は「点検・整備の増加と搭乗員の手順変更」にとどまる。リスクを抱えた見切り発車との懸念は拭えず、鹿児島でさらに緊急着陸が増える恐れがある。

 オスプレイは左右にあるエンジンとプロペラのローターを垂直や水平方向に変えられる特殊な構造を持つ。このため開発段階から特有の事故が続く。

 屋久島沖の墜落事故後も、頻発する「ハード・クラッチ・エンゲージメント(HCE)」が取り沙汰された。エンジンとローターをつなぐクラッチが滑り、再接続する際に衝撃が出る現象だ。

 米空軍は22年8月、HCEに関する事故が続いたとして1カ月近く飛行を停止。クラッチの交換頻度を上げることで安全を確保できるとして再開した。しかし、根本的な原因は不明と言われている。

 日米は屋久島沖の事故でHCEは発生しておらず、別の部品の不具合と説明。米NBCなどは「ギアボックスの問題」と報じた。エンジンとローターに接続するギアとクラッチを含む機器で、車のギアと同様の役割を持つ。

 NBCはボックス内に小さな金属片が発生し、エンジンを損傷させる「チッピング」の可能性に言及した。米メディアは軍幹部の見解として「この機器で前例のない障害」と伝え、部隊が停止前のレベルに戻るには数カ月かかるとした。

 米下院議会委員会は事故原因を独自に調査しており、防止策や透明性の欠如など「深刻な懸念が残っている」との声明を出した。

 米軍が再開を急ぐ背景には、部隊や兵器輸送をオスプレイに依存しているためとされる。自衛隊も「離島防衛の極めて重要な主力」と位置付ける。

 日米は昨年1月、民間の空港・港について、自衛隊と米軍の使用を拡大することで合意した。本土と沖縄の中継地となる鹿児島は、オスプレイなど米軍機の着陸がかねて多い。

 国交省運輸安全委員会で統括航空事故調査官を務めた楠原利行さん(74)=鹿児島市=は「軍用機の緊急着陸が増えれば、民間人が事故に巻き込まれる危険性は増す。地元は詳細な説明を強く求め続けるべきだ」と指摘した。

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