長崎・鳴見台小のはばたき農園 活動スタートから30年 地元農家とつくる学びの場 

30年間、はばたき農園を支えてきた井川さん(左)と森口さん=長崎市鳴見町

 長崎市立鳴見台小の校外体験施設「はばたき農園」(鳴見町)が今年、活動開始から30年を迎えた。市内で学校専用の水田は少なく、児童がコメ作りに汗を流しながら、食の大切さや自然の循環を学ぶ貴重な場だ。その陰には、水田の管理をボランティアで担う2人の地元農家がいる。

 休耕田を活用

 同校から歩いて約30分、市北部の住宅地、豊洋台団地に近い水田。かつては荒れ果てた休耕田だったが、山あいに広がる4区画(計10アール)では1年を通して児童たちの歓声が響く。
 同校は1990年4月に開校。特色を模索していたころ、休耕田の持ち主の一人、森口純一さん(75)と近くの農家、井川義英さん(75)と出会った。「ここを生かして、子どもたちにコメ作りを体験してほしい」。森口さんらの申し出を学校側が快諾。“二人三脚”で農園活動が始まったのは93年だった。翌年から毎年、5年生を中心に田を起こし、もみを作り、田植えから稲刈り、餅つきまで学ぶ。
 裏方で支えるのは森口さんと井川さん。田植え前に水田を平らにする「代かき」や、もみ殻を取り除く「もみすり」を担当。収穫したうるち米を使った調理実習や、ついた餅を全児童に配るのも恒例になった。

 父子2世代で

 四半世紀余りを経て、親子で同農園にかかわる姿も。3人の子どもを育てる日野出倫太郎さん(40)=豊洋台1丁目=は同校5年の時、活動に参加した「はばたき1期生」。大学進学で佐世保市に移った後、2017年にUターン。「まだ農園があったのに驚いた」。わが子と再び農園に通い、サポートする「はばたき応援団」に加わった。
 同校6年の次男、皇斗(きみと)君(12)は昨年、活動に参加。「初めは泥で汚れるのが嫌だったけど餅を食べて、頑張りが味に染みているようで、おいしかった」。修学旅行と同様、楽しい思い出になったという。
 「生産者が時間をかけて作ったものを、消費者は一瞬で食べるけど、コメを買う時、生産者の存在が見えるようになった」と倫太郎さん。森口さんと井川さんが農園のイノシシ対策まで気を配る姿に触れ、倫太郎さんは「30年間も見えない部分を含めて整えてくれるのはすごい」と評する。
 森口さんは「手間暇かけてコメを育てていることを知ってほしい」、井川さんも「稲作を教えながら食文化を伝えたい」と語り、今後も児童の“はばたき”を見守るつもりだ。
 30年間の農園活動をまとめた記念誌が2月に刊行され、卒業生らのメッセージや年表、写真を掲載。A4判、34ページ。900部作製。非売品。

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