亡き父が描いた絵画を譲渡、益金を能登地震の被災者支援へ 外科医・故 齋藤宰さん作150点 東日本大震災以来2回目 18日、えびの市国際交流センター

えびのの風景を描いた故齋藤宰さんの絵と長女の佐保亜子さん=えびの市国際交流センター

 東日本大震災が起きた2011年の11月、88歳で亡くなった宮崎県えびの市の外科医、齋藤宰さんの絵画展が、同市国際交流センターで17日まで開かれている。死の間際、被災者への支援金を募るチャリティー個展を開いた故人にならい、同センターでは18日午後1時から展示品を含む作品150点を、競売方式で譲る譲渡会を開く。益金は全額を能登半島地震支援金に充てる。

 齋藤さんは1962年、同市栗下に外科医院を開院。同市や隣接する吉松町(現湧水町)の患者の診察、手術に携わる一方、休日はえびの市の風景や花などを題材に絵画制作に励んだ。長女の佐保亜子さん(64)=鹿児島市=は「心臓病を抱えており、絵を描くことで医療のストレスを低減していた」と明かす。

 60歳で手術をやめた後は、著名な画家に技術を学ぶ絵画サロンを開くなど、えびの市の愛好者のすそ野拡大に尽力。同センターの上加世田たず子所長(68)は「『頑張ればできるよ』と、優しく初心者を励ます言葉が印象に残る。齋藤先生が文化振興に果たした功績は大きい」と話す。

 定期健診で肺がんが見つかり、「もう長く生きられない」と判断すると、東日本大震災被災者のためのチャリティー個展開催に熱意を燃やした。小林市で開いた個展で約40万円を集めたことを喜び、1カ月後に亡くなった。

 没後13年の絵画展、譲渡会は「作品を朽ちさせるより、絵の好きな人に見てもらう方法はないか」と佐保さんから相談された上加世田さんらが提案した。

 佐保さんは「絵画展を通し、父が絵を通じて豊かな人間関係を築いていたことを実感する。譲渡会は平日になるが、多くの人に来場いただけるとうれしい」と話す。

 絵画展は午前9時~午後3時。同センター=0984(35)3211。

2011年、東日本大震災被災者のためのチャリティー個展開催に熱意を燃やした故 齋藤宰さん

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