工場潜入レポ! まるで急須で淹れたよう 本格派ペットボトル緑茶は“巨大なやかん”で作られていた

人気の緑茶商品の工場に潜入!

いまや、私たちの日常になくてはならないと言えるほど身近な存在となっているペットボトル入り茶飲料。ジャスミン茶やルイボスティーなど多種多様なお茶が登場するなか、定番で繊細なイメージのある“緑茶”を使った商品は、一体どのようにして作られているのでしょうか?

今回は人気商品の一つ、サントリーの「伊右衛門」の製造現場を取材。その味わいの秘密に迫りました。

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【写真5枚】豪快!“巨大なやかん”でお茶を淹れる様子 その量なんと約1800リットル!

訪れたのは、サントリー高砂工場(兵庫県高砂市)です。伊右衛門を含む30種類以上の商品を製造しています。

伊右衛門と言えば、創業230年以上の歴史をもつ京都の老舗茶舗「福寿園」と共同開発されたことで知られ、2004年に発売されてからの20年で“本格派”とのイメージが浸透しました。じつは、時代に応じた味わいを創り出し続けていて、今年また新しくなるのだそうです。

製造工程ではまずはじめに、巨大なやかんのような機械「ニーダー」を使って、福寿園で厳選・加工された茶葉を煮出していきます。今回新しくなるポイントが“濃さ”ということで、この工程で用いる茶葉の量が1.5倍に増やされました。

茶葉を入れる順番やタイミング、時間もすべて細かく決められています。しっかりと煮出したお茶は、ゆっくりじっくり攪拌(かくはん)。辺りに、淹れたてのお茶の豊かな香りが広がります。

ニーダーでは、なんと一度に約1800リットルものお茶が抽出されているそう。淹れる工程としては家庭での方法と大きく変わりませんが、これだけの量を一気に煮出す豪快さは工場ならでは。圧巻の迫力です。

最後に、ニーダーから茶葉ごとすべてトレーにあけ、いわゆる茶漉しの工程を経て抽出完了です。抽出で出る茶殻は、肥料や飼料として活用されているのだそうです。

じつは同工場では、お茶そのものの製造だけでなく、ペットボトルの成型も行われています。

これは「ペットボトルブロー」と呼ばれる作業で、試験管のような形をした「プリフォーム(原型)」に空気を送り込むなどして形が整えられます。

ペットボトルに中身を詰める作業は、1分間に約930本という超高速で進みます。コンベヤには次から次へと流れてくるボトルが行列。それもスピーディーに次の工程へと運ばれていきました。

その後、キャップを締めたりラベルを巻いたりする工程を経て完成です。製品は各工程で厳重に管理され、1本1本機械が細かくチェックしたうえ、その一部は人の手でも検査されていました。最後に箱詰め・積み込みが自動で行われ、出荷の途に就いていきました。

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今や、食事のときのみならず普段の水分補給の役割も担うペットボトル入りの緑茶。そこで工場取材を終えて気になったのが、暮らしに溶け込むがゆえゴクゴクと飲める商品が主流の中、伊右衛門がなぜトレンドと対照的とも思える“濃さ”を打ち出すに至ったのかです。

その点を担当者に取材すると、「『自分好みの濃さの選択』に着目し、“日本茶・緑茶を何となく”手に取るのでなく、“味で選ばれる”商品を目指してのもの」とのことでした。確かに、慣れ親しんだ飲みやすさを感じる現行品に比べ、新しい方は、ひと口含んで感じる華やかな香りとコクのあとに、心地よい渋み・苦みが際立ち、さらにやわらかな甘みを醸すという、これまでに飲んだことがないと感じる味わいでした。担当者の「ひと言でいえば“一度飲んだら違いがわかるお茶”」との言葉にも納得しました。

各社が趣向を凝らし、敢えてトレンドとは異なる味わいを打ち出した商品も登場するペットボトル入り緑茶。今までよりもさらに明確に“選ぶ”楽しみが生まれるのではないでしょうか。

(取材・文=丸安なつみ)

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