<3>態勢整い、つながる居場所 続けた伴走 希望って何ですか

支援者のサポートの先でつながった「月の家」で過ごす舞さん(手前)。この日は他の子どもの誕生日会の準備を手伝った=3月上旬、宇都宮市内

 宇都宮市内の小学校で、低学年の時に不登校となった舞(まい)さん(11)=仮名=と、その家族への支援を2019年ごろに始めた川田奈美(かわたなみ)さん(43)。家事などに苦手意識を持つ母親(45)の生きづらさを知り、少しでも和らげようと寄り添い続けた。

 訪れるたび、ごみのあふれた自宅を一緒に清掃し、折を見ては声をかけた。「こんなふうに苦手なことを一緒にやってくれる人が居たら楽じゃない?」

 最初は周囲に助けを求めることを渋った母親も、川田さんが関わり始めて2年が過ぎたころ、行政のサポートを受けながら医療機関を受診するようになった。自宅にはヘルパーが入るようになり、家庭の環境は次第に整っていった。

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 自宅にこもりがちだった舞さんも、「友達と遊びたい」と口にするようになってきた。

 まずは舞さんと同世代の川田さんの子どもと、近場の公園に出かけることから始めた。少ししたら、母親も伴って市内の子ども食堂へ。極度の人見知りだった舞さんにも友達ができ、定期的に通えるようになると、送迎は川田さんから父親にバトンタッチされた。

 社会とのつながりが希薄だった一家の意識が、舞さんを中心に「少しずつ外に向き始めてきた」。川田さんは、そう感じていた。

 そんな一家に昨年7月、大きな変化が生じた。父親が死去した。舞さんから、その日のうちに知らせを受けた川田さん。家賃など生活基盤を支えてきた父親を失ったことで、家庭がさらなる窮状に陥ることは目に見えていた。

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 後日、川田さんは学校に請われ、状況を報告する場へ赴いた。「この家庭を支援するにはどうすればいいか」と見解を求められた。

 これまでも個人的な支援の中で民生委員などを通じ、状況を伝えてはいた。ただ学校側も人の入れ替わりがあり、全容をつかめているわけではなかった。

 自らSOSを出す家庭ではないこと、継続的につながり関係性を構築する必要があること-。最も深く関わってきた川田さんは、家庭に関するあらゆる情報や見立てを伝えた。

 学校側はすぐに動き出した。

 教師らによる舞さんの登校への付き添い態勢が確立され、市スクールソーシャルワーカー(SSW)と連携し、家庭養育を支える子どもの居場所「月の家」にもスムーズにつないだ。

 舞さんが月の家に通い始めて約半年。「友達と鬼ごっこをしたりお菓子を作ったりして、すごく楽しい」とすっかりなじんでいる。川田さんは「子どもらしく安心して過ごせる場所ができたことが何より」と胸をなで下ろす。

 現在は県SSWなどとして、幅広く子どもたちを支援する川田さん。その視点は、舞さんと関わり始めたころから一貫している。

 「いかに早期に見つけるかが重要。そういう意味では学校は大切な出会いの場です」

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