不要本売却で犯罪被害者支援 「ホンデリング」広がる輪 青森・つがる市

手作りした本などの回収箱を手にする木造高校の生徒たち。新年度も寄付を呼びかける活動をしたいという

 青森県つがる市内の警察、温泉施設、学校、金融機関などが連携し、昨年末から犯罪被害者を支援する取り組み「ホンデリング」を行っている。不要になった本などの寄付を募り、売却代金を転居費などの被害者支援に役立てる全国的な活動で、市内の関係者は「もっともっと支援の輪が広がってほしい」と期待している。

 「あおもり被害者支援センター」(青森市)によると、さまざまな被害者支援を行っている警察のような組織だけでなく、温泉施設、学校なども本の寄付を呼びかけるホンデリングを行うのは、県内では珍しいという。

 集まった本は市場価格を考慮して査定され、買い取り相当額が「全国被害者支援ネットワーク」に寄付される。買い取り価格が1冊50円の場合、2千冊で犯罪被害により転居を余儀なくされた被害者の転居費に、6千冊では二次的な被害を防ぐための啓発セミナー開催に使われるという。寄付できるのはISBNコードが付いた本のほか、CD、DVDなど。

 つがる市には市社会福祉協議会、市、市消防本部、金融機関などでつくる「つがる市犯罪被害者支援ネットワーク」という組織がある。昨年秋、同ネットワーク事務局で、ホンデリングを職場で行っているつがる署が実施の協力を呼びかけた。これを機に12月ごろから、市内9カ所で本などを回収する箱が設置され始めた。職場、市民が出入りする空間などに置かれている。

 しゃこちゃん温泉とじょっぱり温泉は、数十冊の本などが入る箱を休憩所などに置いた。3月上旬までそれぞれ2、3回、満杯になった。同ネットワーク会長で、両温泉を指定管理する市社協の長内克之事務局長は「特に、設置開始から2カ月間は予想以上に集まった。誰でも気軽に入れられるからだろうか」と話す。

 木造高校は昨年末まで約1カ月間、生徒玄関近くに手作りの箱を設置。廊下にポスターを掲示して周知するなどし、二十数冊集まった。新年度も設置する方向だという。担当したJRC部の工藤瑠華さん(1年)は「高校生の立場で少しでも被害者の支えになっていければいい。犯罪被害は身近な話ではないけど、自分事として捉えることができた活動」と振り返る。

 つがる署の坂下浩章署長は「1人1冊の寄付でも積み重なればすごい量になる。ホンデリングは必ずしも浸透しているわけではないと思うが、警察の支援だけでは限界があるので、市全体で機運が高まってほしい」と願っている。

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