子どもを授かるために、子宝にご利益のある神社や子宝の湯と呼ばれている温泉に行ったことのある人もいるのではないでしょうか。年配の人は特にそういった言い伝えを信じていることが多いようです。今回はそんな子宝の湯に関するトラブルを経験した、私の知人Oさんのお話です。
結婚記念日の旅行
Oさんは当時結婚して4年目で、旦那さんと2人で暮らしていました。
まだ子どもがいなかったため、義両親には「早く孫の顔を見せてほしい」と度々言われていましたが、Oさん夫婦は自然に任せたいと思っていたのであまり気に留めていませんでした。
そんなある日、Oさん夫婦は5回目の結婚記念日を迎えることに。せっかくの記念日なので予約がなかなか取れない豪華なホテルに泊まり、ゆったりとディナーを楽しむ予定でした。ところが……。
「大変申し訳ございません、O様のご宿泊はキャンセルのご連絡を頂いております」
当日ホテルにチェックインしようとすると、フロントで伝えられたのはすでに予約がキャンセルされているという事実でした。
「ええ!? そんな、キャンセルなんてしてないのに」
「数日前にお電話でご連絡を頂いております」
「何それ、どういうこと…… 」
義母の企み
「ここに泊まること、誰かに話した? 私は誰にも話してないんだけど」
Oさんが旦那さんに尋ねると、旦那さんははっとした顔をしました。
「母さんだ」
「え、お義母さん!?」
旦那さんは数日前、お義母さんに結婚記念日はどうするのか聞かれ、このホテルを予約していることを話したというのです。
「おい、母さんどういうことだよ!」
旦那さんは慌ててお義母さんに電話をかけました。
「ああ、そんなチャラチャラしたホテルなんて何の足しにもならないから、母さんがキャンセルしといたわよ。その代わり、その近くの子宝温泉をあんたの名前で押さえといたから。そっちに泊まりなさい!」
旦那さんの隣りでそれを聞いていたOさんは、ショックのあまり倒れそうになりました。
子宝温泉へ
せっかく遠出してきているのに他に泊まるところもないため、2人は渋々その子宝にご利益があるという温泉に行くことに。
「え…… めっちゃボロい」
先ほどの豪華なホテルに比べると、その温泉旅館はかなり古びている様子。部屋は狭く、窓の外には隣りの建物があって景色も楽しめません。
問題の子宝温泉といえば、浴場があまり清潔ではないうえにお湯がぬるく、Oさんは少し浸かってはみたものの、風邪をひきそうなのですぐに出てしまいました。
しかも夕食は一応懐石料理のはずなのに、質素で味気ないものばかり。予約していた豪華ディナーとはかなり違うものになったのでした。
「絶対許さん…… 」
ホテルの豪華ディナーを何よりも楽しみにしていた旦那さんは、苛立ちを隠せない様子。せっかくの結婚記念日が台無しになってしまったと、Oさんに何度も詫びました。
散々な結婚記念日の旅行から帰って以降、旦那さんはお義母さんからの連絡を一切受け付けなくなりました。
旦那さんと連絡が取れないのでOさんにも連絡がきましたが、それも無視するよう旦那さんに言われていたのです。
実はOさんは結婚記念日の段階で妊娠していたのですが、結局子どもが産まれて歩けるようになるまでは義両親に知らせなかったとのことです。
子宝〇〇を信じるのは自由ですが、それを無理矢理人に押し付けてはいけませんね。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子