アングル:日銀会合で「彼岸底」期待、マイナス金利解除を織り込み

Noriyuki Hirata

[東京 15日 ロイター] - 日銀の金融決定会合の結果発表を来週に控える中、日本株は先週後半以降、調整気味ながらも底堅さが意識されている。実際に政策が修正されても、金融緩和的な環境が継続すると確認できれば、短期的に買い戻されるとの見方が浮上している。会合の翌日は春分の日(春彼岸の中日)に当たることから「彼岸底」への期待感も聞かれる。

ただ、このシナリオは、日銀会合で市場の想定以上のタカ派ニュアンスが示された場合に崩れるリスクがあり、会合結果だけでなく、その後に控える植田和男総裁の会見への注目度も高まりそうだ。

<売り圧力が集中>

日経平均は7日に取引時間中の史上最高値4万0472円11銭をつけて以降、上値は重く、12日には直近高値からの下落幅が約2200円に広がる場面があった。

年初からの株高による短期的な過熱感や、米半導体株の上昇一服に加え、この間には日銀の3月会合での正常化を示唆する報道が相次いだことが市場で警戒感された。

需給悪も重なった。期末前の3月上旬は例年、国内の機関投資家が積極的にリスクを取りにくいタイミングで、株高後の期末に向けた益出し売りが意識された。

3月第1週(3月4日─3月8日)の投資部門別売買動向でみると、年金基金などの動向を反映しているとされる信託銀行の5408億円の売り越しが目立った。株高を受けて年金のポートフォリオに占める株式の比率が高まり、適正な比率に戻すためのリバランスの売りが膨らんだとの見方が有力だ。

<中長期の材料に変化なし、「彼岸底」の期待>

ただ、直近の株高一服で、リバランスの売り圧力はいったん減退するとみられている。機関投資家による期末を見据えた益出しの売りも、春分の日あたりまでに一巡するというのが一般的な見方だ。

一方、日銀会合を前に、マイナス金利の解除やYCC(イールドカーブ・コントロール)の撤廃、ETF(上場投資信託)の新規買入れ停止などの観測報道を各メディアが報じ、市場の織り込みも進んできた。

今回会合で政策修正が決まる場合でも、想定の範囲内であれば「需給面からの下押し圧力が低下してくるタイミングに、不安材料のいったん出尽くしが重なる。直近高値からの下落幅の半値程度の戻り余地はありそうだ」と、りそなアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャーは話す。

足元で日経平均の上値は重い一方、大引けにかけて下げを縮めたりプラスに転じるなど、底堅さも意識されている。デフレ脱却、東証改革といった日本株の好材料に変化はなく、中長期目線の海外勢の買いは継続しているとみられている。信託銀による売り越しが膨らんだ3月第1週に、海外勢は1758億円買い越した。

日銀会合の翌日には米連邦公開市場委員会(FOMC、19─20日)の結果発表が控えているが、市場では「米連邦準備理事会(FRB)による年内利下げのシナリオが崩れなければ、株高基調は継続するのではないか」(アセットマネジメントOneの浅岡均ストラテジスト)との見方が聞かれる。

「節分天井・彼岸底」という相場格言がある。その規則性は明確でなく有効な言い伝えとはみなされていないが、奇しくも今回の日銀会合の翌日は春彼岸の中日に当たる。今年の節分天井はなかったが「彼岸でのいったん底入れはあり得る」(りそなAMの戸田氏)との声もある。

<リスクは急速なタカ派織り込み>

日銀会合でのリスクとしては、市場がタカ派ニュアンスを受け取り、急速に金利上昇や円高が進むことが警戒される。

2月には日銀の植田総裁や内田真一副総裁から、先行きマイナス金利を解除しても、緩和的な金融環境が当面続く可能性は高いとの認識が示された。

それだけに、市場ではマイナス金利解除後の早期利上げまでは織り込みが進んでおらず、会合結果や総裁会見で連続利上げの匂わせがあるようなら、市場は動揺しかねないとみられている。

今会合を無難に通過しても、先行きの利上げの行方への思惑は継続する。4月の展望レポートで「物価見通しが引き上げられるようだと思惑を誘うかもしれない」と、三木証券の北沢淳商品部投資情報グループ次長はみている。

中小企業への賃上げの広がりや、物価変動の影響を加味した「実質賃金」の動向への目配りも引き続き必要になる。

実質賃金は1月まで22カ月連続のマイナスとなっており「実質賃金のプラスに転じるタイミングが、重要になりそうだ」とアセマネOneの浅岡氏は指摘している。

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