焦点:中国リチウム産業、EV減速が直撃 南米にコスト負け

Siyi Liu Andrew Hayley

[北京 14日 ロイター] - 電気自動車(EV)用バッテリーの主要原料であるリチウム価格が低迷し、中国の採掘産業を圧迫している。採掘コストの高さも相まって、同国は生産拡大計画や新規プロジェクトの見直しを迫られている。

EV需要が鈍ったことで世界のリチウム価格は下落し、ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス社が集計するバスケット価格は過去1年間で8割以上も下がった。既に世界中で多くの生産者が操業停止や人員削減を余儀なくされている。

中国は昨年、世界のリチウム採掘量の約4分の1を占めた。アナリストは、長引く価格低迷により、リチウムを含有する高価な鉱石、レピドライトの採掘が打撃を受けると予想している。レピドライトはリチウム抽出コストが比較的高いため、リチウム価格が低迷すれば生産が持続不可能になるからだ。

ライスタッド・エナジーのバイスプレジデント、スーザン・ゾウ氏は「レピドライトの採掘や、中国など世界各地の新規プロジェクトが価格低迷によって大打撃を被っている一方、相対的にコスト面で有利な他の種類のリチウム鉱山、特に南米の塩湖かん水からのリチウム生産は急成長を続けるだろう」と言う。

ライスタッドはレピドライトの減速を主因として、2024年の中国のリチウム採掘量予想を従来の54%増から約12%増に引き下げた。世界全体のリチウム採掘量の見通しは、42%増から27%増に下方修正した。

価格調査会社ファストマーケッツによると、昨年の中国のリチウム生産量のほぼ半分がレピドライトからの抽出だった。レピドライトの量は過去2年間で2倍以上に増加し、炭酸リチウム換算(LCE)で11万4500トンに達した。

アナリストによると、中国ではレピドライトからリチウム1トン(LCE)を処理するのに約8万元(1万1120ドル)から12万元を要するが、塩湖かん水とスポジュメン鉱石だと、コストはそれぞれ約4万元と6万元だ。

このため中国のレピドライト採掘は採算が悪化している。EV需要の鈍化と供給過剰により、炭酸リチウムのスポット価格はピークだった22年11月の60万元前後から10万元前後まで下落した。

春節(旧正月)休暇後には在庫補充需要によってリチウム先物が上昇した。しかし中国を拠点とするアナリスト5人は、今年のスポット価格は10万元ないし12万元の範囲で推移するか、わずかな上昇にとどまると予測している。

<市場の惨状>

中国のリチウム埋蔵量は世界第4位。中国政府は、電池向けの需要を満たし、輸入依存を減らすために投資を拡大して採掘を強化してきた。

調査会社CRUによると、投資の多くは江西省南部で行われている。最新のレピドライト・プロジェクトがいくつか進行中の地域で、こうしたレピドライトからLCE1トンを生産するコストは約12万元だ。プロジェクトには、EV用電池世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)や、永興特殊材料科技の鉱山が含まれる。

CRUのシニアアナリスト、イン・イウェイ氏は、CATLの鉱山などは「利ざやがマイナスになっており、生産を縮小する可能性が非常に高い」と述べた。

先月はCATLがこの鉱山の生産を一時停止したとの憶測が広がり、オーストラリアの鉱山企業の株価上昇に火をつけた。CATLは当時、平常通り操業していると説明した。

江西省宜春市の大手企業に勤める鉱業専門家は「市場は本当にひどい。宜春の生産者は、コスト上昇と価格低迷の中で生き残ろうと必死だ」と語った。

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