風はどうして吹くの?どうやって風は強くなる??意外と答えられない天気の疑問を気象予報士が解説

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春を迎え、気温の高い日が多くなるとともに、風が急に強くなる日も多くなってきました。

風は、晴れていて雲ひとつない日にも、そして曇りや雨の日にも吹きますが、そういえば風はなぜ吹くのでしょうか。

雨であれば積乱雲のような発達した雨雲によって強い雨が降るのは納得ですが、風が強くなるのはどんな状況…?
子どもに聞かれたら、答えられるでしょうか。

今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、身近だけど意外と知らない風のしくみについて教えてもらいます。

風は「空気の移動」

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気象学的には、風は「空気の移動」です。

そしてモノが移動するということは、何かしら力が働いていて、その力が強ければたくさん動くし、弱ければちょっとしか動かないということになります。

空気の移動に関わっているのは、気圧と呼ばれる力です。

気圧とは、空気の圧力。

つまり、空気どうしの圧力で押し合いへし合いが起こった結果、空気が移動し、風が吹く、というしくみです。

空気の押し合いはなぜ起こる?

気圧と風のイメージ

空気の押し合いが起きると、強いほうが弱いほうを押し出すようにして空気が動いて、その方向に風が吹きます。ではそもそもなぜ押し合いが起きるかというと、空気にはもともと圧力が強いところと弱いところがあるためです。

圧力が強い(気圧が高い)ところは、たとえば天気図で高気圧が描かれているところ。
逆に弱い(気圧が低い)ところは低気圧が描かれているところです。

また、「下降気流」といって、空高いところから地面に向かって空気が降りてきているような場所も、上から空気でぎゅっと押しつぶされる形になりますから、地面付近で気圧が高くなります。

空気は冷たいほうが重いため、「下降気流」があるのは空気が冷えているところです。

それとは反対に、地面付近が熱くなっている場所では、空気が軽くなって昇っていき「上昇気流」が発生するので、気圧は低くなります。

風の強さは気圧の「差」の大きさ

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空気どうしの押し合いによって空気が動いて風が吹くとき、強いほう(高い気圧)と弱いほう(低い気圧)の気圧の「差」が大きければ大きいほど、空気は速く遠くまで動きます。これが、風が強い状態です。

そして春は、とくに南北の気圧の「差」が大きくなる時期でもあります。というのも、春は日本海で低気圧が急速に発達しやすいため。日本海で低気圧が発達するということは、本州から見て北側で気圧が非常に低くなります。

それに対して日本の南側には、夏に主役となる太平洋高気圧が春のうちから徐々に勢力を伸ばし始めるため、南側は気圧が高い状態。

こうなると、気圧の高い南から低い北へと空気が大量に動いて、強い南風が吹くことになるのです。

春の強風は災害につながりやすい

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春、日本海で低気圧が発達して強い南風が吹くと、さまざまな災害につながります。

過去には工事現場の足場が崩れてケガ人が出たことや、首都圏の鉄道が軒並み止まって帰宅困難者が出た事例も。また、火災の延焼を招くこともあり、実際に春は大規模な山火事が起きやすい季節でもあります。

あるいは災害まで至らずとも、電車が遅延したり洗濯物が飛ばされたり、花粉が大量飛散したりと、生活に大きく関わってくるのです。

天気予報を見ていると晴れや雨のような天気マークや気温の数字にばかり注目しがちですが、風の情報も重要。
ぜひ天気予報のコメントにも耳を傾けて、日々の生活に役立ててください。

■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。

編集/サンキュ!編集部

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