東日本大震災で受けた被害を教訓に飲料水事業に本格的に参入 富士山麓で生産した飲料水を首都圏直下地震や南海トラフ地震の際にはすぐに供給 アイリスオーヤマ

東日本大震災を教訓に裾野市内に工場を作った企業があります。目的は災害発生時の「飲料水の供給」です。

裾野市にある、アイリスオーヤマ富士裾野工場。

アイリスオーヤマと言えば家電や家具といったイメージがありますが、こちらの工場で製造されているのは、富士山の湧き水を使った「飲料水」です。

そもそも、なぜ静岡県内に工場を置いているのでしょうか?

東日本大震災を教訓に

その理由は・・・。

アイリスオーヤマ 広報室 佐藤沙耶さん:
「弊社が宮城県に本社と工場を持っている企業で、東日本大震災でも実際に被災した経験がある。この経験を機に大規模な災害の際に必要不可欠な飲料水を供給するための体制を構築するために設立された工場。」

宮城県仙台市に本社を置くアイリスオーヤマ。

東日本大震災では、本社や工場など多くの建物が倒壊し、甚大な被害を受けました。

中でも、特に影響が大きかったというのが東北地方だけでなく、関東など19の道府県にまで広がった大規模断水です。

当時は、全国各地でペットボトルの飲料水が品不足になるなど、水に関する不安が広がりました。

アイリスオーヤマでも水道をはじめ、電気や通信など様々なインフラが停止してしまい、当時はプールの水を利用して工場の機械を動かすこともあったといいます。

本格的に飲料水事業に

東日本大震災の経験を踏まえ、災害発生時に迅速に飲料水を供給する体制を整えようと、アイリスオーヤマは2021年に小山町に工場を設置。

飲料水事業に本格参入しました。

そして、その規模をさらに広げようと、去年の7月から稼働が始まったのがこの富士裾野工場なんです。

アイリスオーヤマ 広報室 佐藤沙耶さん:
「こちらがこの工場の飲料水の生産ラインになる。こちらの工場では1ラインあたり最大で1時間当たり500㎖の飲料水が3万6000本製造されている。やはり今後想定されている首都直下地震や南海トラフ地震などの大規模な災害に向けてすぐに発生した際に供給できる体制を構築している。」

東日本大震災を経験したからこそ企業として力を入れているのが「防災」だといいます。

その中で、命をつなぐ役割を持つ水の供給体制強化ということに行きつきました。

アイリスオーヤマによると、飲料水の製造工場を静岡県の小山町や裾野市に造ることで、緊急時には迅速に関東圏への配送を可能にしているといいます。

関東の他の工場と備蓄などを連携することで、現在は関東圏に向けた独自のセーフティーネットを構築しているといいます。

能登半島地震でも水が不足

そうしたなかで、今年の元日に発生したのが能登半島地震。

実際、被災地からは「水」を求める声が上がっていました。

被災者(1月3日:石川県)
「電気は大丈夫だけど、水が止まっている状態」
「やっぱり飲み物、水ですよね。きのうもここに来たけど、全部売り切れている」

Q.市内は水が無い状態?

「無いです。コンビニもダメになっているから、開いているコンビニはほとんど無い」

震災発生時、多くの人が求めた「水」。

能登半島地震では、発災から2カ月以上が経った現在も、およそ1万9000戸で断水となっていて、厳しい現状が続いています。

能登半島に独自に支援、これから起きる地震にも…

アイリスオーヤマでは能登半島地震の被災地に水や日用品を送る独自の支援を現在も続けていると言います。

アイリスオーヤマ 広報室 佐藤沙耶さん:
「避難生活で必要となる食品、パックご飯だったり飲料水だったり、そういう生活必需品を送っている。今は避難所での生活から応急仮設住宅での生活に移行している流れがあるので、先日応急仮設住宅に向けて家電も送っている。」

アイリスオーヤマ 広報室 佐藤沙耶さん:
「被災した企業だからこそ今回の能登半島地震だけでなく、今後起こる災害で必要となるものをすぐに現場に送らせていただく。東日本大震災の時は本当に全国からたくさんの支援をいただいた。今回その支援に対する恩返しも踏まえ私たちが協力できることは全力で協力させていただきたい。」

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