年齢を重ねていくと、将来への不安はいっそう大きくなっていきます。「年金、いくらもらえるんだろう……」。学校を卒業以来、正社員で平均的な給与を得ていたら年金だけで暮らせるほどの金額になるといわれていますが、保険料の納付もままならず、さらに厚生年金への加入もほとんどないような場合は、どれほどの金額になるのでしょうか。
200万人が「正社員になれないから非正規」
――振り返れば、ずっと、社会の底辺を生きてきた
来年、60歳を迎えるという男性。「音楽で生きていく」と九州から上京したのは、バブル前夜のこと。なかなか芽が出ず、30歳を迎えたころに就職。しかし、1997〜1998年の深刻な不況により、勤めている会社は倒産。正社員だった期間はわずか3年だったといいます。
景気が一時的に良くなり始めた2005年ごろに、正社員を目指して活動するも、「ちょっと年齢的に……」と幾度となく断られ、正社員になることを断念。現在、コンビニで週6のアルバイトをしながら生活をしています。
総務省『労働力調査』によると、2023年、非正規社員は2,124万人。非正規社員でいる理由をみていくと、最も多いのが「自分の都合のよい時間に働きたいから」で全体の33.5%。続いて「家計の補助・学費等を得たいから」で17.7%、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」10.8%と続き、「正規の職員・従業員の仕事がないから」は196万人で、全体の9.2%。「専門的な技能等をいかせるから」7.8%と続きます。
この10年の推移をみていくと、「自分都合で非正規」は10年前の165%、「家計補助で非正規」は10年前の95%、「家事等との両立で非正規」は10年前の115%、「正社員になれず非正規」は10年前の58%、「専門性を活かすためにで非正規」は10年前の124%。仕方なく非正規社員を選択するケースは、大きく減っていることが分かります(図表)。
【図表】年齢別にみる非正規の理由、10年前と比較した際の増減率 出所:総務省『労働力調査』
さらに「非正規でいる理由」×「年齢」を10年前と比較してみると、働く高齢者が増えているからでしょう、「65歳以上」ではどの理由も10年前の150%以上を記録。また「自分都合で非正規」は「15〜24歳」の若年層で増加幅が大きくなっています。
一方、正社員になれず非正規」は「65歳以上」の高齢者以外は、すべて10年前と比べると減少。しかしその数値に注目すると、44歳までは10年前の20〜40%と大きく減少しているものの、45〜64歳はともに70%台と減少幅が小さくなっています。
――40代後半以降は正社員になるのが難しくなる
「年齢の壁」を感じさせる結果です。
正社員だったのは3年間だけ…ずっと非正規の男性が手にする「年金額」
現在の男性の収入は、月25万円ほどになり、手取りは19万円ほど。1人暮らしの男性には十分だといいますが、来年60歳を迎えるにあたり、健康不安が大きくなっているといいます。
――いつまで働けるのか
先日、何十年ぶりかにインフルエンザにかかり、1週間の静養を余儀なくされた男性。これまで健康だけが取り柄だと自負していたものの、ふと不安になったといいます。
男性が20歳になった1985年、年金制度加入が強制となりました。しかし、男性には15年ほどの未納時期があるそうです。仮に60~65歳の間に国民年金の加入制度を利用したとしたら、加入期間は25年になります。さらに厚生年金に3年間だけ入っていたので、その分が加算されます。
試しに65歳から手にできる年金を算出したところ、国民年金は月4万2,500円、厚生年金は月6,412円。合計5万円に満たないことが分かりました。
最近、アルバイトであるものの厚生年金に加入。実際はその分も加算されると考えられますが、仮に65歳まで厚生年金に加入できたら、厚生年金は1万円ほどアップします。それでも生活のために、コンビニバイトは続けなければならないことは確定的です。
――どこで人生、間違えたんだろう
一生、働かないと生きていけない……ある意味、ハッキリと見えている未来に、後悔の言葉しか見当たらないといいます。
[参考資料]