英王室発祥の伝統クッキーで地域盛り上げる 独学で腕磨いた38歳作家 「思い通りの表現楽しい」

流れ星やアルファベットの形のクッキーに絞り袋でデコレーションを施す衣川さん(京都府福知山市)

 花束やアルファベットの形をしたクッキーの表面に、粉砂糖と卵白を混ぜた「アイシング」を絞り出し、文字や模様を描く。花びらの一枚一枚まで丁寧に再現し、こだわりの淡い色合いに仕上げたクッキーは芸術性を醸し出す。アイシングクッキー作家の衣川まゆさん(38)=京都府福知山市=は「繊細なデザインを思い通りに表現できる楽しさを全国に届けたい」と意気込む。

 昨年9月、福知山市に専門店「magucookies」をオープンさせた。誕生日や結婚式など特別な時間を盛り上げる一品になればと、インスタグラムで客からの細かい注文にも応じる。クッキーの型は自作したものも含めて500種を備える。家族やペットの似顔絵、アニメキャラクターは写真を基に忠実に描く。子育て世代に配慮し、添加物が少ない天然由来の色素を使う。

 福知山高卒業後、趣味の菓子作りを究めようと、大阪市の調理師専門学校に進学した。2009年に憧れだったフランスに渡り、レストランやカフェで働いて腕を磨いた。イギリスを旅行した際、王室発祥のアイシングクッキーに一目ぼれしたという。専門書を取り寄せて独学し、14年に京都市で開かれたシュガーアートのコンテストで銀賞に輝いた。

 三男の出産で19年に帰国。新型コロナウイルス禍でフランスに戻れなくなり、祖母が暮らしていた空き家に移り住んだ。一時は市街地の商店街に店を構えたが、定住を決意して自宅横に小さなプレハブの工房を設けた。

 今後は大好きなアンティークデザインの試作に力を入れ、イベントでの出店拡大を目指す。インスタ映えを意識し、自信作の投稿も欠かさない。「人とのつながりに支えられ、長年の夢を実現できた。クッキー作りの魅力を分かち合いながら古里を盛り上げたい」

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