ロシアで15日、大統領選の投票が始まった。当局によると複数の投票所で、投票箱に放火したり液体を流し入れたりするなどの妨害行為があり、数人が逮捕された。
国営メディアによると、投票済みの用紙が入った投票箱に緑色の液体が入れられたり、投票箱に火がつけられたりした。投票所の外で花火に火をつける事態も発生した。
大統領選の投票は17日夜まで。ウラジーミル・プーチン大統領が、本格的な対立候補が不在の選挙で5回目の当選を果たし、さらに6年間の任期を得ることが確実視されている。
国営メディアによると、15日午後の時点でモスクワでの投票率は23%。
政府は、妨害行為などへの警戒を強めるよう各地の警察に呼びかけている。
ロシア国内でこれまでに少なくとも計8人が逮捕されたが、当局は妨害行為がプーチン大統領への抗議なのかは明らかにしていない。
「鮮やかな緑」の液体
タス通信によると、大半の事件はモスクワ、南部ヴォロネジ、南西部カラチャイ・チェルケス共和国の投票所で起きた。
BBCヴェリファイ(検証チーム)はこれまでに、ロシア各地で撮影された6件の事案の映像を確認した。その中にはサンクトペテルブルクの投票所近くで火炎瓶を投げつける女性の姿もあった。
そのほか、本物の映像だと確認された動画では、複数の投票所で投票箱に染料が注ぎ込まれた。モスクワでは女性が緑色の液体を投票箱に流しむ様子が防犯カメラ映像に映っていた。投票ブースから出火している様子の映像もあった。
ロシア中央選挙管理委員会のニコライ・ブラエフ副委員長は15日、投票箱に液体が流し込まれる事案は5件あったと明らかにした。
インタファクス通信によると、投票箱に注がれた液体は「鮮やかな緑」を意味する名の「ゼリョンカ」。消毒剤だが、ロシアやウクライナでは抗議行動の手段として使われている。2017年には野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が路上でいきなり、この液体を顔に浴びせられたとされる。ナワリヌイ氏は今年2月、北極圏の刑務所で死亡した。
エラ・パムフィロワ選管委員長は、一連の妨害活動は「くず」によるサボタージュだと非難。投票箱を荒らして拘束された人の一部は、金銭報酬が目当てでやったと認めていると話した。最高5年の実刑判決を受ける可能性があると、委員長は強調した。
委員長によると、拘束されたうちの一人は、10万ルーブル(約16万円)の報酬を約束されていると話したという。
故ナワリヌイ氏の妻、ユリア・ナワルナヤ氏は、プーチン政権に反対する人たちに抗議の手段として、17日正午に投票所に一斉に向かい、プーチン大統領以外の候補に投票するよう呼びかけている。
ナワルナヤ氏は西側諸国に、プーチン氏が5選されてもそれを認めないよう求めている。
占領下ウクライナでも投票強要
ロシア政府は占領下におくウクライナ領内でも、投票を強要している。南部へルソン州の町スカドフスクでは、投票所の前のごみ箱内で自家製装置が爆発したが負傷者はなかったと、ロシア政府任命の行政当局が明らかにした。
ソーシャルメディア「テレグラム」に投稿された複数の動画によると、投票箱を破損した人の一部はウクライナを支持するスローガンを口にしていたという。
(英語記事 Russia election: Arrests for vandalism as ballot boxes targeted in Putin vote)