水俣病国賠訴訟 熊本地裁22日判決 地域と出生年の線引き判断、最終解決に向かうか

支援者らの前で勝訴の旗を掲げる弁護士=2023年9月27日、大阪市の大阪地裁前

 水俣病特別措置法の救済から漏れた水俣病不知火患者会(熊本県水俣市)の会員144人が国と熊本県、原因企業チッソに1人450万円の損害賠償を求めた集団訴訟(熊本訴訟)は22日、熊本地裁で判決が言い渡される。同種訴訟で昨年9月の大阪地裁判決は、居住地や出生年で「線引き」した特措法の枠組みを否定し、原告全員を水俣病と認めた。司法闘争を繰り返してきた水俣病問題は最終解決に向かうのか。

 水俣病は公害健康被害補償法に基づき患者認定され、補償を受ける。複数の症状の組み合わせを求める厳格な認定基準を巡り訴訟が相次ぎ、国は患者認定されない被害者救済の「政治決着」を2回打ち出した。2009年施行の特措法は2度目の救済策にあたる。

 特措法は水銀中毒による手足のしびれなど一定の症状がある人に一時金210万円などの支給を定め、約3万8000人が救済された。一方で同法は、メチル水銀が排出された不知火海(八代海)に面する熊本、鹿児島両県9市町の沿岸部などの居住歴や、チッソが排出を止めた翌年の1969年11月末までの出生などを条件とした。

 満たさない場合は汚染された魚介類の多食を示す漁業証明書などの提示が必要で、1万人近くが非該当になった。2012年7月の申請締め切りに間に合わなかった人もいる。

 救済を受けられなかった両県の不知火患者会員らは線引きの不当性を主張し、国などに損害賠償を求め13~22年、熊本地裁に提訴。原告1400人の半数以上は長島町や出水市など鹿児島県に住む。

 今回判決が言い渡されるのは提訴1、2陣の144人。国側は発症するほどのメチル水銀暴露はなく、症状の原因が水俣病とは限らないと反論。発症したとしても、損害賠償請求権が消滅する20年の除斥期間が経過していると主張する。

 同種訴訟は大阪、東京でも係争中。昨年9月に初の判決言い渡しが大阪地裁であり、特措法対象の地域や年代外でも、不知火海の魚介類を継続的に多食すれば「水俣病を発症しうる程度にメチル水銀を摂取したと認められる」と指摘。原告128人全員を水俣病と認めた。国と熊本県、チッソは控訴した。

 ◇水俣病 熊本県水俣市のチッソ工場の廃水に含まれていたメチル水銀が魚介類に蓄積し、食べた住民が発症した中毒性の神経疾患。死者も出た。症状は手足のしびれなどの感覚障害や視野狭窄(きょうさく)など。1956年5月1日に公式確認された。公害健康被害補償法に基づく審査で認定され、今年2月末現在の認定患者は2284人。国は2度の救済策で、認定患者でなくても一定の症状がある人に一時金などを支給したが、認定申請や訴訟が続いている。

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大阪地方裁判所に向かう水俣病国賠近畿訴訟の原告団ら=2023年9月27日、大阪市北区

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