令和の”因縁カード”朝倉未来vs平本蓮は19年前の吉田秀彦vs小川直也に匹敵!? 榊󠄀原信行CEOは「生き様をかけた闘い」と断言【超RIZIN.3】

「負けたら格闘技人生を引退します」――。そのひと言をきっかけに、緊張感は一気に高まった。

3月16日、東京・六本木ヒルズアリーナで『Yogibo presents 超RIZIN.3』の緊急記者会見が行なわれ、朝倉未来と平本蓮、榊󠄀原信行CEOが登壇。大勢のファンが詰めかけたなか、同CEOから7月28日にさいたまスーパーアリーナで「朝倉未来vs平本蓮」の対戦カードが発表されると、会場は大興奮に包まれた。

正式に対戦が決まった直後、先に”口撃”を仕掛けたのはド派手なサングラスをかけて登場した血気溢れる若きファイターだった。平本が「朝倉未来という存在が自分に刺激を与えてくれて、こんな感じのカリスマというか、唯一無二の存在で、自分の中で感動とか尊敬とか憧れとか…んなことある訳ねえじゃねえか、バーカ!」と、いきなり辛辣な言葉を浴びせた。

続けて、朝倉が昨年7月にヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)にギブアップ負け、11月にはYA-MANにキックボクシング・ルールで1ラウンドKO負けを喫した事実を突き付けながら、「僕が最後のトドメを刺そうと思います。ボコボコにします」と豪語。『路上の伝説』に引導を渡すと明言した。
一方的にけなされた朝倉は「復帰戦に楽な相手を用意してもらった」と平本を見下しながら、「平本蓮に負けたら格闘技人生を引退します」と自信たっぷりに言い切った。

これには、平本も即反応。「俺も朝倉未来なんかに負けたら引退します。ここで約束します」と、両者とも”現役引退”を懸けた予想もしない展開に発展した。

思わぬ事態に榊原CEOは「別に引退しなくてもいいんじゃないの?」と困惑気味も、2人の断固たる決意は変わらず。この一戦にかける両ファイターの思いを汲み取りながら、「やっぱり最終的には自分が決めることなんで。どうしても引退するって言えば、一生懸命引き止めますよ全力で。でもその気持ちが翻意しないっていうか変わらないのであれば、それは仕方ない」と2人の覚悟に理解を示した。 今年で「RIZIN」は9年目を迎える。榊原CEOは「9年間の歴史の中で、この2人ほどそれぞれの色は違うけど、輝きを放ってRIZINをここまでみんなの心を震わせる闘う場所にした。そんなスーパースター2人が今年の夏に激突する。そんな瞬間は格闘技をこれから見続けていく歴史の中でも、とてつもない記憶に残る試合になる」と断言。「それぞれの生き様をかけた闘いになる」と強調したうえで、19年前に自ら携わった伝説の大晦日決戦になぞらえた。

「若いファンは記憶がないかもしれないけど、小川直也と吉田秀彦がPRIDEの時に闘った。その時に僕が思ったのは本当にそれぞれの存在意義を全否定させるために闘う。その時に近い、そんな思いがしてます」
2005年12月31日、さいたまスーパーアリーナで開催された『PRIDE男祭り』のメインカードは、格闘技史上に残る伝説の決闘と言っても過言ではない。当時は「明大柔道部の先輩・後輩対決」「バルセロナ五輪の金・銀メダリスト対決」などと話題を呼んだだけでなく、両雄の関係は「犬猿の仲」と称され、両者出席の会見では殺伐とした雰囲気が漂い、異様なムードを醸し出した。

決戦当日は4万9801人の大観衆が因縁の対決に熱い視線を注いだ。序盤は殴り合うも、グラウンドの攻防から吉田が小川の左足首をがっちりホールド。吉田が前方に倒れ込みながら足首を捻ると、「ボキッ」という生々しい音をたてて小川の骨を粉砕した。1ラウンド6分4秒、レフェリーストップ(TKO)で後輩の吉田が勝利を挙げた。

榊原CEOが「ミスター・プライド決定戦」と称した令和の因縁カード。平本は朝倉がCEOを務める、1分間最強を決める格闘技大会『BreakingDown(ブレイキングダウン)』にならって「ブレイキングダウンルールにのっとって、1分以内に倒します」と宣戦布告。朝倉は「なるべく長い時間をかけて、痛めつけてやろうかな」と静かな口調で語り、互いを牽制した。

4か月後、最後までリングに立っているのは、はたしてどちらか。RIZINを代表するファイターの”生き様”を懸けた戦(いくさ)は、19年前の大晦日決戦を超えるのか。大いに注目である。

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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