芸歴22年目・LLR「芸人を続けるモチベーションになった『THE SECOND』」

芸歴22年目のお笑いコンビ・LLR。現在、彼らは出場資格が芸歴16年以上の『THE SECOND~漫才トーナメント~』に挑戦中だ。130組を超えるエントリーのなかから、選考会を勝ち抜き、32組に選ばれ、3月23日(土)から行われるノックアウトステージに挑戦する。

かつてはヨシモト∞ホールを中心に活動し、カリスマ的な人気を誇っていた二人だが、『M-1グランプリ』から卒業後はネタに対してのモチベーションが低下していたという。そんな二人に再び火をつけたのが『THE SECOND』だった。ニュースクランチのインタビューでは、改めてLLRのこれまでの道のりを振り返りながら、この大会にかける想いを聞いた。

▲LLR(福田恵悟、伊藤智博)【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】

話半分で聞いてた『THE SECOND』の噂

――『THE SECOND』は、お二人が芸歴20年を超えてからのスタートとなりました。開催が決まった時点で出場することを決めたんですか?

福田 始まるかもしれない……みたいなのは少し前から噂で聞いてたんですけど、この世界、どうかなるかわかんないじゃないですか。そういうのって、すぐぽしゃるんで(笑)。だから、話半分で聞いてたんですけど、実際に開催が決まりましたね。出場することに迷いはなかったです。

伊藤 まあ、出るだろうなとは思ってました。

福田 逆に資格があるのに出ない人の気持ちがあんまりわかんないですよね。だって、出れば1000万円をもらえる可能性がありますもんね?

▲「出れば1000万円をもらえる可能性がありますもんね?」と福田

――そうですね(笑)。たしかに、出場しないと可能性はゼロですから。第一回はどんな大会になるかもわからなかったと思うのですが、実際に出場してみていかがでしたか?

福田 決まってから最初の選考会までが1か月くらいしかなかったんですよ。賞レースからもしばらく遠ざかってたんで、フワフワした感じで行きました。でも、いざ始まったら、袖で待ってるときの感じとか、自分の出番までの感じとか。“これだ、こういうのあったわ!”っていろいろ思い出しましたね。めちゃくちゃ緊張もしましたし。よく、これを毎年やってたなって思いましたね。

伊藤 そうですね。控え室でも、みんなすごい練習してたり、緊張してましたね。こういうのは久しぶりだなって感じました。

――開催決定から選考会まで約1か月だったとのことですが、何か調整したりとかは?

福田 6分尺のネタがあんまりなかったので、短くする作業はちょっとやりました。でも、『THE MANZAI』とかも始まったときはそうだったんですけど、初めて開催される大会って雰囲気がよくわかんないんですよ。だから、普段の寄席でやっているスタイルのまま行きましたね。ほとんどの出場芸人がそんな感じだったんじゃないですか。

――昨年の結果は、残念ながら選考会で敗退となりました。

福田 選考会って、『M-1』でいったら1回戦みたいな感じだと思っていたんですけど、実際は準々決勝ぐらいの感じだったんです。だから“普通にやったら受かんないか……”って思いました。

――ちなみに、昨年の決勝はご覧になりましたか?

福田 僕、じつは見たんすよ!

伊藤 普通、見るでしょ(笑)。

――あはははは(笑)。実際に見て感じたことはありましたか?

福田 どっちが勝ったのか、結果が出るまでわかんなかったんですよね。『M-1』は雰囲気でなんとなくわかるじゃないですか。だけど、『THE SECOND』はお客さん審査だからかもしれないですけど、“こっちが勝つんだ?”と思ったことはありました。

伊藤 最後はそれぞれの好みになっちゃいますもんね。

今年の選考会は去年よりお客さんが温かった

――そうなると対策が難しいですよね。昨年の結果を踏まえ、今年はどうでしょう?

福田 寄席に向いているようなネタというより、 もうちょっと入り込んだネタのほうがいいのかなと感じたので、今年は1年かけて『THE SECOND』に向けてネタを作りました。でも、去年の大会をお客さんも見てるんで、今年はなんとなく一筋縄ではいかないヤツらが出てきそう、というのがわかっていると思うし、そういうのを楽しみにしてる気もするので難しいですよね。

――まずは今回、選考会を突破されましたね!

福田 ちょっとネタを作り込むには時間が足りなかったな……と感じたので、突破するとはまったく思わなかったですね。結果が出る前から“来年に向けてがんばろう”って(笑)。

伊藤 そう(笑)? 僕は体感として去年よりお客さんが温かったので、“行った!”とまでは思わなかったですけど、“どうかな?”とは思ってました。それで、マネージャーは他の日も見てたんで聞いたんですけど、「わかんないんです」って言われて……。

――マネージャーさんも「行けます」とは言いづらかったんでしょうね。

伊藤 でも、タモンズには「絶対に行きましたよ」と言ったらしいです(笑)。

――(笑)。タモンズさんとは同じマネージャーさんだそうですが、同じAブロックになってしまいましたね。どちらもひとつ勝ち抜けば、当たってしまう。

福田 そうなんですよ。東京吉本って大阪に比べて母数が少ないからか、結束力が強いんですよ。だから、できれば東京吉本とは当たりたくなかったですね。先を見てもしょうがないんですけど。

ダイタクにもらったアドバイスで気づいたこと

――選考会で披露したネタはどのような理由で決めたんですか。

福田 じつはあれ、めちゃくちゃ適当に作ったネタなんですよ。最初、イベント用に依頼されて作ったネタで、それ以来やることがなかったやつなんです。だけど、沼津(ラクーンよしもと劇場)で2日間で8本ネタやることがあって……ネタがなかったんで、そのときにやってみたんです。

そこでもあんまりウケなかったんですけど、そのあとダイタクとのライブのときに、「もう、俺たちじゃわかんないから、お前らがTHE SECONDのネタを決めてくれよ!」と言ったら、そのネタを指定されて。

「これでウケたことないんだよ」と言ったんですけど、「じゃあ、それをウケるようにしてください」って言われたんですよ。

▲ダイタクに今回のネタを決めてもらったんです

――磨けば光るものを感じてたんでしょうか。でも、ダイタクさんに対して信頼があるんですね。

福田 決めてもらったほうが、こっちも気が楽なんで(笑)。あと、ダイタクが俺の友達と飲んでるときに「LLRさんはネタはめちゃくちゃおもしろいですけど、とにかく漫才が下手です」と言ってたらしくて。

それが衝撃だったんです。この22年間、LLRはネタはおもしろくないけど、 なんとか漫才のうまさでごまかせてると思ってたんで、そっちだったのか!って。今までは、ネタをもっとおもしろくしなきゃいけないって悩んでたのに、違ったんだと(笑)。でも、ネタはもう十分なんだと思ったら、めっちゃ気楽になりました。

――LLRさんの漫才が下手なんて思ったことないですけどね。でも、福田さんが後輩の方の意見を参考にするっていうのが、なんかすごく意外でした。

福田 昔だったら聞かなかったと思いますけど、こだわりがなくなってきたんですよ。あと、今まで人の話なんか聞いてこなかったんで、1回くらい言われた通りやってみようかなって。結局、今までも別にそんなよくないんだったら、いろいろ変化を起こしてみたほうがおもしろいんじゃないかなと。

美容メンテナスが必要な年齢になりました(笑)

――何か考えが変わるきっかけとかあったんですか?

福田 きっかけとかは別に……でも、もう44歳なので、体力的にやれなくなってくることも増えていくじゃないですか。だから、これまでやってないことはガンガンやっていったほうがいいのかなって。

それこそ、以前は結婚とかも絶対イヤだったんですよ。周りからなんか言われるのもイヤだし、そもそも向いてないと思ってたんです。でも、できるうちに新しいことはやったほうがいいなと思って、踏み切ってみました。特に結婚したからといって、仕事に対する意識は変わらなかったですけどね(笑)。

――ファンの方も福田さんの結婚は驚きだったと思います。伊藤さんも今年、お子さんが誕生されましたね。

伊藤 そうですね。僕も子どもができたからといって仕事に対しての変化はそんなに感じないですけど、やっぱり生活は楽しくなりました。今はまだ子どもが小さいので、奥さんの実家にいるんです。だから、会える日に向けてがんばろう! みたいなのはあります。年を取ったら、この日が待ち遠しいって思えるイベントが少なくなるじゃないですか。だから、この日が楽しみって思える日があるのはすごくいいですね。

▲「子どもと会える日を楽しみに頑張っている」と伊藤

――お互いから見て、昔と比べて変わったなと思う部分はありますか?

福田 見た目はだいぶ変わりましたよ。漫才中にパッと横顔を見たとき、ほんとジジイだな! と思いますね(笑)。

伊藤 たしかに、年を取ったと思いますよ。見た目もそうですけど、動きとかも。

福田 伊藤にかかわらず、同世代のヤツらと会うとビビりますよ。シワが増えてたり、もみあげが真っ白だったりとか。だから、本当に年を取れば取るほど、ちゃんとメンテナンス、美容はやったほうがいい(笑)。なんとなく、昔から男芸人がそういうのをやるのはダサいみたいな風潮がありますけど、ちゃんとやらないとダメだと思いますね。見てられないんで。

この先どうなるのかなんてわかんない

――『M-1』の出場資格を失ってから『THE SECOND』が始まるまでの期間、賞レースに代わる目標など、お二人が芸人を続けてこれた理由はありましたか?

福田 なかったですね。芸人みんなそうだと思うんですけど、寄席だけ出てるみたいになって目指すものがなくなると、やる気も出ないし、新ネタ作ることもサボっちゃうんですよ。ネタやって帰るだけ、みたいな。

――では、新たに目標ができたということは大きかった。

福田 やりがいはありますよね。ネタをやるのも作るのも好きなんですけど、目標がないと作る気になれなかったので。

――そもそも、お二人が芸人になったときは、どんな芸人になりたいと思っていましたか?

福田 どうなるかなんて、まったく想像してなかったです(笑)。

伊藤 そうですね。僕らは二人とも、あんまり先のことを考えるタイプじゃないんで。

福田 それに、僕らがNSCに入った頃はテレビしかなかったんです。だから、「売れる=テレビに出る」ってことなんだろうなって。でも、テレビの出方もわからなくて。今だったら『M-1』で決勝に行けば、とかありますけど、それもなかったし。売れるって、なんなんだろうと。

伊藤 そうですね。だから、とりあえずライブに出て、勝ったら次の場所に出れるっていうのを繰り返してました。とにかく目先のことに必死でした。

福田 でも、劇場のトップになったからって売れるわけじゃなくて。それに僕らの10年くらい先輩って、ほとんど辞めてるんですよ。だから、何を目指していいのかわからなくて、何年後にこうなりたいとかは全然考えられなかったですね。

▲ノックアウトステージで見れる二人の漫才が楽しみだ

――それでも20年以上、舞台に立ち続けてきたのはなぜですか?

福田 なんでしょうね(笑)。でも、この先もどうなるかなんてわからないですよ。若いお客さんからしたら、ジジイの漫才なんておもしろくねえだろうなって。大阪みたいに漫才を伝統芸能にできたらいいですけど、東京では難しいし。

伊藤 そうですね。それこそオジさんばっかり出てる『THE SECOND』って、僕が高校生だったら、“おもしろくねえ”と思っちゃいそう(笑)。だから、見てくれてる人がいっぱいいることが不思議なんですよ。

福田 本当に不思議な世界になってきてます。こんなふうになるなんて想像がつかなかったし、この先もどうなるのかなんてわかんないですよ。

――だからこそ、目先の目標として『THE SECOND』があるというのは大きいんですね。次は「ノックアウトステージ32→16」となりますが、改めて意気込みをお願いします。

福田 まず対戦するのがダブルアートなんです。同じ吉本ですけど大阪だし、芸歴も離れてるんで……申し訳ないですけど、正直あんまりわかんないんですよ。どうなるんですかね?

伊藤 でも、そんなこと言ってたら、対戦前に沼津の劇場で一緒の出番になっちゃって、ネタ見れちゃうんですよ(笑)。まあ、当日は先攻だから余計なこと考えなくていいので気楽です。シンプルにどうなるのか楽しみです。

福田 結局、こういう対決形式って、自分たちがどんなにウケても、相手がそれよりウケたら負けちゃうんで、自分たちのネタどうこうじゃなくて、相手がウケないことを願うだけなんです(笑)。

――そういう意味では、先攻でしかもトップバッターでできるというのは、お二人にとってベストだったんですか?

福田 どうなんですかね。でも、昔からこういうトーナメント形式のバトルはめっちゃやってきたんですけど、後攻のほうがどう考えても有利なんですよ。後攻でウケれば先攻の印象を消せるんで。でも、そのぶん、気楽に肩の力を抜いてできそうです。

(取材:梅山 織愛)


▼実力派芸人による「沼津週末寄席~太鼓判ライブ~」毎月開催中!
会場:沼津ラクーンよしもと劇場
時間:①12:30開演②15:00開演
チケット:1000円
詳細は、沼津ラクーンよしもと劇場HPをご確認ください。https://numazu.yoshimoto.co.jp/2024/02/3.html
※LLRは3/17(日)に出演予定→https://x.gd/hVsEa

▼THE SECONDノックアウトステージに向けたSPライブ!
3/18(月)19:00開演「役漫SP」
会場:新宿永谷ホール(新宿Fu-)
チケット発売中→https://x.gd/8F8RU

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