【ミャンマー】実勢1ドル=3700チャット台に、中銀警戒[金融]

ミャンマーの現地通貨の実勢相場が先週末、今年初めて1米ドル=3,700チャット台まで弱含んだ。国軍が4月から徴兵制を実施すると発表したことで、経済の混乱が深刻化するとの懸念が高まっていることが背景にあるようだ。軍事政権下のミャンマー中央銀行は警戒感を強めており、15日には15の交流サイト(SNS)ページなどを名指しし、「虚偽情報を流している」と非難した。

チャットの実勢レートは2月下旬に3,600チャット台となり、今月15日に3,700チャット台に突入した。

2021年2月のクーデター以降、政情不安や軍政の経済統制、米欧による制裁などがチャット相場を揺さぶってきた。実勢レートの過去最安値は22年8月末に記録した4,500チャットとされるが瞬間的なもので、同年末にかけて回復し、23年前半には2,800~2,900チャットで安定的に推移していた。

直近のチャット安は、軍政が定める「防衛ライン」に接触する可能性もある。実勢レートが昨年8月に1米ドル=4,000チャットに迫った際に軍政は市内の両替商の取り締まりを強化し、1米ドル=2,100チャットに固定する公定レートで取引するよう促した。このレートで外貨を売る市民や両替商はおらず、外貨取引が滞った。

中銀のタンタンスエ総裁は昨年8月、1米ドル=3,900~4,000チャットの実勢レートで計算して(金や燃油、食用油などの)商品を販売する行為が「処罰の対象になる」と発言していた。

最大都市ヤンゴンにある両替商は17日、NNAに「当面は米ドル取引ができない」と打ち明けた。中国・人民元やタイ・バーツなど他の外貨ならば売買が可能という。

中銀の15日付の通達では、インターネット上で実勢レート情報を発信してきた「ミスター・ハンバーガー・チャンネル」「ミャンマー・マーケット・プライス・アプリ」などを「為替操作者」であると断定した。軍政による取り締まりを恐れ、このうち幾つかのサイトやSNSのページは活動を一時停止した。

中銀が妥協ラインとして示しているのが、同行の管理下で国内企業が外貨を売買できるオンライン取引で適用されているレートだ。この仕組みでの取引は昨年6月に始まり、足元は1米ドル=3,300チャット台後半で推移している。

外貨を必要とする個人向けの少額両替にも、オンライン取引レートに近いものが適用されている。15日付の通達では、3行(カンボーザ=KBZ=銀行、エヤワディ銀行=AYA銀行、ユナイテッド・アマラ銀行=UAB)の一部支店が1米ドル=3,100チャットで、1人に対して300~500米ドル相当を販売していると説明した。

ただ、このレートで外貨を購入できるのは出稼ぎや治療、留学、巡礼などで国外に出る人に限られる。軍政は外貨に加えて食用油や金などの「適正価格」を示し、一定の量をこの価格で提供することで価格安定化を図ろうとしているが、大きな成果は出ていない。

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