【タイ】JICAと首都庁、大気汚染分析の報告会[社会]

セミナーにはバンコク各地区と近郊5県の関係者らが多く参加し、大気汚染源や対策について理解を深めた=14日、タイ・バンコク(NNA撮影)

国際協力機構(JICA)は14日、バンコク首都庁(BMA)と共同で、首都圏の大気汚染改善に向けた技術協力事業「持続的なPM2.5予防・軽減のための大気管理プロジェクト」の中間報告セミナーを開催した。バンコクの50地区と近郊5県の当局関係者らを招き、汚染物質の分析状況などを報告。日本が過去に実施した対策も紹介し、各地域に理解と協力を呼びかけた。

JICAは天然資源環境省公害管理局(PCD)などと共同で2022年7月から同事業を行っている。首都圏の大気汚染は毎年1月から4月前半にかけて深刻化。主な発生源は◇自動車の排ガスなど交通系◇周辺地域・周辺国での野焼き・山火事◇発電所を含む工業系——の3種類だ。

PCDの産業汚染部門のカンチャナ・ディレクターらは報告会の前半で、バンコクには12カ所、近郊5県(サムットサコン、サムットプラカン、ノンタブリ、パトゥムタニ、ナコンパトム)には11カ所の大気汚染モニタリングステーションがあると紹介。直接的な発生源や、排出された汚染物質が環境大気中で化学的・物理的な変化を受けて発生する「二次生成大気汚染物質」について分析を進めていると説明した。JICA側の協力事業実施チームによると、二次生成が占める割合が大きいことなどが確認されている。

■年内に対策提言へ

後半では、同事業の実施コンサルタントである櫻井幸子氏が、PCDと共同で検討している対策案について説明した。欧州の排ガス規制「ユーロ6」の導入、老朽化した車両の買い替えと電気自動車(EV)の導入の促進、工場の操業時間の管理・抑制、揮発性有機化合物(VOC)規制、工場に対する排出基準の導入、野焼き・山火事の管理・抑制などが検討されている。

事業実施チームは評価・検証を経て対策案をまとめ、政府に提案する予定。提案は、19年に制定された「PM削減のための国家行動計画(19~24年)」の改定版に盛りこまれる見込みで、政府は年内に改定版を発表するとみられている。

質疑応答では、バンコク都内の職業訓練学校の幹部から、ディーゼル車向け排ガスフィルター(DPF)の取り付けや100%バイオディーゼルの導入を検討すべきではないかとの提案が上がった。

PCDの関係者はこれに対し、DPFの効果は検証済みで大規模な導入を検討すべきことは認識しているとコメント。ただ、コストがかかるため、「(ディーゼル車を多数所有する)事業者らに取り付けを促すメカニズムを見つけ出す必要がある」などと説明した。

技術協力事業の実施チームは、今後もバンコクと近郊5県の関連当局者らを対象に、大気汚染対策の研修などを実施していく計画。日本で実績のあった対策や、モニタリング手法を紹介し、改善に向けた取り組みの輪を広げていく考えだ。

JICAタイ事務所の鈴木和哉所長(右4)や、技術協力事業の実施コンサルタントである檜枝俊輔氏(左2)、櫻井氏(左)らが登壇した=14日、タイ・バンコク(NNA撮影)

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