中国の科学者、抗がん能力を持つコウモリを発見

中国の科学者、抗がん能力を持つコウモリを発見

リケットホオヒゲコウモリ。(資料写真、昆明=新華社配信/劉奇) 

 【新華社昆明3月18日】中国の科学者はこのほど、コウモリの一種であるリケットホオヒゲコウモリ(Myotis pilosus)に抗がん能力が備わっていることを発見した。研究の成果は国際的な学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で発表された。

 コウモリは哺乳類の中でも特に適応進化に成功した分類群の一つで、現在世界で確認されているコウモリは1400種類余りと、げっ歯類に次いで2番目に多い。多くのコウモリの寿命が同様の体型を持つ他の哺乳類より長いことも注目に値する。論文の責任著者である中国科学院昆明動物研究所の劉振(りゅう・しん)研究員は「コウモリの中でも比較的寿命が長いのがホオヒゲコウモリ属で、ブラントホオヒゲコウモリ(Myotis brandti)の最大寿命は41歳を超えている」と指摘。ハダカデバネズミやメクラネズミなど長寿の哺乳類の多くが天然の抗腫瘍能力を持っていることから、コウモリにも抗がん能力があるのではないかと推測されてきたと説明した。

 コウモリの抗がん性に関する仮説を検証すべく、研究チームは発がん遺伝子のHRASとSV40LTをコウモリ7種類の線維芽細胞のゲノム中に挿入し、体外培養した後に体内に移植して培養した。その結果、リケットホオヒゲコウモリの線維芽細胞のみ悪性増殖が起こらず、リケットホオヒゲコウモリが進化によって抗がん能力を手に入れたことが明らかになった。

中国の科学者、抗がん能力を持つコウモリを発見

リケットホオヒゲコウモリ。(資料写真、昆明=新華社配信/劉奇)

 研究チームは最終的に、リケットホオヒゲコウモリはCOPS5遺伝子の上流において低酸素誘導性転写因子HIF1Aの結合部位が欠損しているためにCOPS5の発現が低下し、これによって抗がん能力が生じることを突き止めた。劉氏はCOPS5について「がんに密接に関わる遺伝子であり、細胞の増殖やアポトーシス(組織の良い状態を保つための細胞死)、細胞周期のコントロール、DNAの損傷修復など、腫瘍の発生や成長に関係する生物機能に影響している」と解説した。

 研究チームは現在までに、リケットホオヒゲコウモリから腫瘍の成長と密接に関わる三つの遺伝子を発見しており、これらの遺伝子の阻害薬が臨床研究に応用できるようになれば、がん治療の大きな助けとなる可能性があるという。

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