FC町田ゼルビアはなぜ強いのか。思い出された「黒田剛監督の組織論」。その根底にあるのは…

今季のJ1リーグで4試合を消化して首位に立つのが、J1初挑戦のFC町田ゼルビアだ。強度な守備と速攻、高精度のセットプレーを武器に名古屋グランパス、鹿島アントラーズ、北海道コンサドーレ札幌を破り3連勝と快進撃を見せている。

町田はなぜ強いのか。

ピッチでのパフォーマンスが洗練されているのは、町田というチームが組織としてしっかりと整備されているからだろう。昨年、黒田剛監督にYouTube『サッカーダイジェストTV』でインタビューした際、独自の理論を話してくれた。何より印象的だったのは、「独りよがりにならない」というフレーズだった。

「監督が頭でっかちになって、あれもできるこれもできる、あれもやりたい、これもやりたい、あれやっとけ、これやっとけ、というのは独りよがりで裸の王様状態。それが組織にとって最悪な状況。すごく神経を使って、みんなが同じベクトルの方向に進んでいく。これが組織の進み方としてすごく重要です」

そうした組織論を構築するうえで、根底にあるのは青森山田高時代の経験だ。思い出されるのは、次の言葉だ。

「その30年の中で私ひとりの時代も長かった。ウォーミングアップも監督業もやれば、1日3試合も4試合もやるわけで、チーム数が多くなれば全部を見ないとダメ。何千キロとバスを運転したり、色々と分担作業したいのにできない時代も経験しています。その苦しみを理解しているし、だからこそ一つひとつの仕事の重みや重要性もすごく分かっています。

いきなりプロの生活に入っていたら、多分そこへの感謝や一つひとつの仕事の重みや責任をあまり感じなかったかもしれません。(青森山田時代は)長年、ひとりで練習相手を見つける作業、マネージャー的な業務、グラウンド整備から芝生の管理、雑草抜きまでやってきました」

一つひとつの仕事の重み、重要性を理解している黒田監督の下でチームがひとつにまとまるのは必然なのかもしれない。

構成●サッカーダイジェストTV編集部

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