中学受験準備は小学4年生からで本当にいいの?先輩家族の体験談とプロからのアドバイス

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中学受験のための通塾は、小学校中学年から通われる方が多いようですが、もっと早くから塾へ行かすべきか悩むママも多いよう。みんなは、いつぐらいから受験準備を始めたのでしょうか。口コミサイト「ウィメンズパーク」のママたちの声を紹介するとともに、子どものやる気を引き出す塾・プラスティーの塾長八尾直輝さんにお聞きしました。

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少しでも早く塾へ行かせたほうがいいものなの?

まず最初にひとりのママの悩みを紹介します。

■ 低学年からの通塾は受験につながるもの?
「年中の息子がいます。小学校は公立に行く予定です。
これからの成長により不確定な要素はありますが、中学受験を考えています。
本格的な準備は小学3年生の3学期ごろからと言われていますが、中学受験に向けての環境整備という意味では大手進学塾の1年生クラスに入塾して、まずは週1回程度から通うのに慣れさせ、徐々に学習習慣をつけるのが良いのではと思っています。お子さんが低学年から塾へ行き始めた方、アドバイスをお願いします」

この声に、先輩ママたちがアドバイスします。

■ 塾の上位組は3年の夏期講習から入った人がほとんど
「通ってもよいが、通わなくてもよい、が私の回答です。1年生から通っても結果は変わらないだろと思うからです。
我が子は今4年生ですが、1年生から一緒に通塾した人で一番上のクラスにいる子はいません。ほとんどが3年生の夏期講習から入ったメンバーです。塾に通い始めると時間がないので、低学年のうちは家で家庭学習の習慣をつけるなどで十分だったと思っています。
ありがちなのが、スタートが早かったために学校の授業が簡単に感じ、それが態度に出してしまい、先生や同級生とトラブルを起こすことです。低学年のうちは塾でも割とできてしまい、親も子も『これはいけると期待満々』→4年生になり、下手すれば5年6年で入ってきた子にぐんぐん抜かされて、焦りと自信喪失で最終的に不本意な結果、ということもあります。低学年のうちは『勉強することは楽しいこと』と思えるようになれば万々歳」

■ 低学年の塾での学習にお金と時間をかけることに疑問だった
「各ご家庭で事情も違えばお子さんの性格も違うので、これが正解というのはないと思います。でも、個人的には、地頭というか、勉強への向き不向きが絶対にあると感じますし、低学年から通塾したかどうかでは最終的な結果はさほど変わらないと思います。低学年なら、塾といっても大したことをやっているわけではありません。やっていることを知ったら、それに時間とお金をかけて通うのはちょっと、と思うかもしれない内容です。
私は時間の無駄と判断しました。ただ、それは私に、子どもの勉強のために割ける時間があったからで、そうでなければ別の選択をしたかもしれません」

■ 早くから通ったからといって、難関校に行ったわけではなさそう
「塾へ行くことは無駄ではないでしょうが、くもんや学研、通信教育など、他の学習系の習いごとと同じ気がします。
私の周りにも1年生から通ってる子が何人かいましたが、難関校に進学してはいません。私も3年生の夏くらいがいいと思います。あまりに早い時期から偏差値が出ると、親も振り回されて大変かも。子どもにもよりますが、6年間同じ塾というのは、緊張感も保てなさそうです」

■ 「低学年の時は思いっ切り遊んでおけ!」は真実
「『低学年の時は思いっ切り遊んでおけ!』とよく言いますが、本当にそう思います!
(まあ、週一で塾に行くくらいは大丈夫と思いますが)中学受験するということは、親が子どもと一緒にいられる最後の時期を中学受験に捧げるということだと思います。私的にはこれが中受の最大のデメリットだと思います」

必要はないけれど、活用するのも1つの方法

低学年からの通塾を勧めるママの声は、あまり多くないようですね。では実際に、塾の立場から見るとどうなのでしょうか。子どものやる気を引き出す塾・プラスティーの塾長八尾直輝さんに聞きました。

「結論から言うと低学年から通塾する必要はありません。お子さんによって適切なタイミングを見計らい、上手に塾を『利用する』ことが重要です。

まず、一般的な話をしておきます。
中学受験をゴールに考えるのであれば、小学4年生からの通塾がスタンダードです。カリキュラムは塾によって異なる部分もありますが、まず基本は小4スタートを基準に、前後1年以内に開始するようなイメージをもっておくのがいいと思います。つまり遅くとも小5から入塾するのが基本ということです。

幅が広いのには2つ理由があります。
1つ目は子どもの『やる気次第』で『ベストタイミング』が異なるからです。
たとえば、学校で遊びのサッカーだけでは物足りなくなった子どもが、より高いレベルのクラブチームに入りたいと希望するように、『もっと学びたい』という感覚が出たタイミングが通塾のベストタイミングです。もちろん子どもが自ら学びたい、とはっきり口にすることは難しいでしょうから、ある程度親の誘導はあってもいいでしょう。でも『学びたくない』という子どもを通塾させるのは可能な限り避けるべきです。『サッカーしたくない』という子どもをクラブチームに連れて行っても、そこでよい選手になる可能性が極めて低いのと同じでしょう。

もう1つは、カリキュラムの問題です。基本的には小5からの2年間で入試に必要なカリキュラムを消化するのが一般的です。つまり十分な『学ぶ力』がついているお子さんであれば、小5からの通塾で中学受験に間に合わせることができると言えます。

つまり通塾のタイミングとして、大きなポイントになるのが以下の2つです。

もっと『学びたい』と子どもが考える
通塾に向けて十分な学ぶ力がついている

もっと『学びたい』という前者のパターンが理想的ですが、なかなか、そうはいかないものですよね。後者のパターンでは、どのような『学ぶ力』が必要なのか考えてみたいと思います。

①十分な集中力
②学校レベルの学力

小5までに、この2つを意識して伸ばしていくのがいいでしょう。

①は『興味あることに没頭する力』と言い換えてもいいでしょう。スポーツなどの習い事でもよいので、ある程度の長い時間、1つのことに集中できるといいでしょう。

②は学力についてです。学校で習ったことが身につかないというのは、勉強のやり方に問題のある可能性が高いです。学校の勉強に苦戦しているようだったら、まずはその原因を見つけ、解決しておくべきです。

小5までに『準備』が必要だと言いましたが、それは必ずしも小5まで通塾する必要がないということではありません。多くの塾が『小4までは準備の時期』というのは共通しています。『準備』のために塾を活用するのも1つ有効な方法と言えるでしょう。そういう意味で、うまく塾を活用できるのであれば低学年からの通塾も『アリ』と言えるでしょう。

学びは『マラソン』によく例えられます。一生続く、終わりのないマラソンです。受験や進学などのタイミングで定期的に『状況確認』をする必要はありますが、それを常に通過点ととらえ、学び続けることが重要です。
『受験』と聞くと『まずは、そこまでなんとか全力疾走で』と考えるお気持ちは分かりますが、それは『マラソンでとりあえず5km地点まで全力疾走で』と考えるくらいナンセンスなことです。
目先の結果にとらわれることなく、『学ぶ力』を育てていくことが、お子さんにとってよい中学受験につながるのだと思います」(お話/八尾直輝さん)

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小中高とほとんど勉強しなかったのに、仕事に就いてから勉強をするようになったという話も聞くことがあります。子どもが勉強をしたいと思う時期を見極めるのは難しいそうですが、長い目で見守っていきたいですね。
(取材/文・橋本真理子)

※文中のコメントは「ウィメンズパーク」(2022年1月末まで)の投稿を再編集したものです。
※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。
※記事の内容は2022年6月の情報で、現在と異なる場合があります。

八尾直輝さん

PROFILE
勉強のやり方を教える塾「プラスティー」を創業、現在は取締役・塾長として、会社の経営、塾の運営全般に関わっている。共著に『子どものやる気を引き出すゲーミフィケーション勉強法』(講談社)、執筆協力に『中学生からの勉強のやり方』『図解 中学生からの勉強のやり方』(ともにディスカバー・トゥエンティーワン)がある。

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