湘南のアンカー田中聡が浦和戦で3ゴールに絡むハイパフォーマンス。だが本人は納得できず「勝ちたかったのひと言に尽きます」

湘南ベルマーレは3月17日、J1第4節で浦和レッズとホームで対戦。試合は4-4の引き分けに終わった。

激しい撃ち合いとなった一戦で、2トップを組んだ鈴木章斗とルキアンが2ゴールずつを記録し、ストライカーとしての仕事を果たした。ただ、この日のホームチームのMOMを挙げるなら、攻守に躍動して3得点に絡んだ田中聡だ。

0-1で迎えた23分、背後を取った右ウイングバックの鈴木雄斗へ田中が鋭いスルーパスを送ると、クロスを逆サイドの杉岡大暉が折り返し、最後はルキアンが仕上げて同点に追いつく。

2点目が生まれたのは32分。田中がアンカーの位置から飛び出し、ボックス付近でボールを受けると、ジネディーヌ・ジダンを彷彿させるマルセイユ・ルーレットで相手をかわし、左足でシュート。ゴール前に待ち構えていた鈴木章がコースを変えて、得点につながった。

46分の3点目は、鈴木章がハイプレスでボールを奪い、そのままシュートへ持ち込むという独力でのゴールだったが、81分の4点目に再び田中が絡む。相手DFのクリアをワンタッチで叩くと、ボールはポストに直撃。こぼれ球をルキアンが押し込み、一時は勝ち越しに成功した。

【PHOTO】ルキアンの移籍後初ゴールを含む壮絶な撃ち合い!意地の見せ合いでゲームはドローに|J1第4節 湘南4-4浦和
田中はアンカーだが、中盤の底に留まるのではなく、ピッチを縦横無尽に駆け回り、多くのプレーに絡むプレースタイルが特長だ。浦和戦は、攻守における彼の武器が存分に発揮された試合だったと言える。

マリ、ウクライナとの国際親善試合を戦うU-23日本代表のメンバーに選ばれている田中は、代表活動のため試合後すぐにスタジアムを発ったが、出発時刻寸前まで取材に対応。浦和戦で自身が関わった得点シーンをこう振り返った。

「1点目は雄斗君が要求してくれたので、自分は合わせるだけでした。2点目はシュートを打ったつもりが章斗に当たって、たまたま入ってくれた。(ルーレットは)とっさに出たものです。4点目もルキアンが詰めていたおかげでゴールになって良かったですけど、やっぱり自分で決めたいです」

浦和戦の多くの局面で輝きを放ったように見えた田中だが、本人は満足できない様子だった。やはり、ドローに終わった点と4失点の事実に課題を感じているようだ。

「勝ちたかったのひと言に尽きます。個人として、どこにボールが来るかを予測しながらプレーできたし、練習しているミドルシュートが得点につながったのは良かった。でも、もっと自分のところでボールを収めたり、奪えたりすれば、さらに時間を作れるはずです。後半の終わりは足も動かなかったので走力を付けたいですし、なにより4失点は今後の課題です」

浦和戦は田中にとって、収穫の多いゲームとなっただろう。課題を見つめ直し、自らの武器に磨きをかけられれば、チームの上位浮上、そしてU-23アジアカップと、その先にあるパリ五輪への出場も叶うはずだ。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

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