子育ては母親の仕事?…戦前の女子教育から脈々と続く“母性神話” 男性が育休とっても4割が5日~2週間

楽しそうに遊ぶ早川怜汰ちゃん(中央)と母親の友紀さん(右)、父親の典宏さん=鹿児島市

 国や自治体は少子化対策の柱に子育て支援を掲げる。少子化の背景には、ジェンダーギャップ(男女格差)があるとの指摘がある。性別による役割分業意識やイメージの決めつけは、出産や子育てにどう影響するか。鹿児島の今を探った。(連載「子育て平等ですか?かごしまの今」①より)

 2月下旬、1歳7カ月の早川怜汰ちゃんは、母親の友紀さん(35)、父親の典宏さん(46)と、鹿児島市の自宅で遊んでいた。「音楽に合わせて体を揺らすんです」。2人は怜汰ちゃんを見つめ、ほほ笑んだ。

 同じ職場で働く友紀さんと典宏さん。友紀さんは時短勤務を選び、保育園の送り迎えを担当する。体調を崩すと園から「お迎え要請」もある。友紀さんが仕事を抜けられない時は、友紀さんの母がサポートする。

 友紀さんは怜汰ちゃんが10カ月の時に職場復帰した。周囲から「1歳まで見た方がいいのでは」「早く仕事に戻ってきて」とさまざまな反応があった。共働きの子育ては大変だが、周りに支えられており感謝は尽きない。

 怜汰ちゃんは1歳を過ぎるとよく歩くようになり、より注意が必要になった。帰りが遅くなる日もある典宏さん。「うちに着くと寝ていることが多い」と寂しげに語る。「日々遅くならないようにし、休日は積極的に家事や育児を担っている」

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 男性が子育てに励む姿は、珍しくなくなっている。県の2021年度の意識調査では「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方を「否定」する人の割合が初めて男女とも「肯定」を上回った。

 国は育児休業取得率の目標設定や公表義務化など、男性による育児の推進に力を入れる。県内の男性正規労働者の育休取得率は18年度の5.5%から22年度25.6%に上昇した。ただ、22年度の取得期間は5日~2週間未満が4割を占め最多。取得率は女性の94.1%に比べて差が大きい。

 3人の子どもを育てる薩摩川内市の会社員男性は、3人目で初めて2週間の休みを取った。半年ほどが理想だったが、仕事の都合などで難しかったという。「休業中の収入が減らないことが最低でも必要。休んだ人を支える職場の環境があれば取りやすいだろう」と話した。

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 自治体による、さまざまな子育て支援施策の整備も進む。保育施設までの送迎や放課後の預かりといった育児を手伝う有償ボランティアを紹介する「ファミリー・サポート・センター」もその一つ。県内では20市町が設置する。県によると、援助を望む会員は19年度の約6300人から、22年度は7200人に増えている。

 曽於市は4月の開始を目指し、育児支援を希望するボランティアの募集など準備を急ぐ。担当者は「地域で助け合いながら子育てする仕組み。まずは情報発信していきたい」と意気込んだ。

 母親だけでなく父親、地域など社会全体で子育てする環境づくりが進む一方、現状は、依然女性に偏る傾向がある。鹿児島国際大学の山田晋名誉教授(ジェンダー論)は「戦前の女子教育は良妻賢母になるための教えだった。男女平等を目指す法律や制度が整っても、『子育ては母親のもの』という意識は脈々と続いている」と“母性神話”の根強さを解説した。

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