惜敗の横浜戦、10人でも諦めない京都を象徴した“CB”宮本優太の奮闘

[J1第4節]京都 2-3 横浜/3月17日/サンガスタジアム by KYOCERA

京都はホームのサンガスタジアムで横浜に挑み、3-4で敗れた。結果が全てという見方をすれば、勝点1も取れなかったことをポジティブに捉えることはできない。

しかし、試合後に曺貴裁監督が「人生が詰まった90分間だった」と振り返るように、前半の退場劇で10人になった京都が諦めることなく一度は2-2に追いつき、後半に再び勝ち越されてからも同点、逆転の可能性すら感じるパフォーマンスを見せたことは、敵将のハリー・キューウェル監督も認める戦いぶりだった。

チームの2点目を決めたU-23日本代表のMF川﨑颯太も「正直に言えばやり切った」と胸を張る試合で、よもやのアクシデントに対応したのが、浦和から期限付き移籍で京都に加入しているDF宮本優太だ。

柏との開幕戦では後半の途中から左サイドバック、終盤の3バック変更で右ウイングバックに回った宮本は、2節・湘南戦は途中出場ながら、今度は右サイドバックでプレーした。

しかし、3節・川崎戦は出番がなく、アウェーでの勝利をベンチから見守った。そんな宮本に横浜戦で、曺監督から声がかかったのは51分だった。

8分にセンターバックのアピアタウィア久が一発退場、アンカーを担っていた金子大毅が最終ラインに下がって、麻田将吾とセンターバックを組むことに。そこから一度は0-2とリードされるも、前半の終わりにカウンターとCKから得点した京都だが、その金子が負傷してしまったのだ。

そして宮本が入っていきなり、横浜のスローインを起点に、FWアンデルソン・ロペスに勝ち越しのゴールを許してしまう。ニアでシュートに行った植中朝日のキックがミスになり、結果的にA・ロペスに合わせられるという、京都からすると少々アンラッキーな形だったが、宮本は「あの時間に失点したくはなかった」と振り返る。

それでも「失点したことに引きずることはないって。0-2から追いつけたことで、もう失うことはないと思って、チームのみんなも感じてたと思うので。そこから1点返そうと冷静にやれていたところはある」と語ったとおり、そこから10人で前向きに戦うチームの後方を幅広く守り、A・ロペスにも仕事をさせなかった。

右サイドバックが本職の宮本は171センチと大柄ではないが、フィジカル面には絶対の自信を持つ。浦和では“ランニングマン”の異名を取るほど、タフなハードワーカーでもある。

実は川崎戦の後、トレーニングマッチでセンターバックを経験していたという。「その時に良いイメージがあった」と宮本。緊急事態とはいえ、曺監督が「お前ならどこでもできる」と力強く宮本の背中を押せたのは、そこで見せたパフォーマンスもあったのだろう。

【PHOTO】スタジアムに熱い声援を響かせる京都サンガF.C.サポーター!
「今までやってきた浦和だったり、ベルギーでああいう選手とやるのは練習から毎日、当たり前だったので。そういうところを自分の中で意識できていたのが、今日の試合でも巡ってきたのかなと思います」

そう語る宮本の真骨頂と言えるシーンがあった。63分に横浜のビルドアップをFW原大智がカットし、京都のロングカウンターに。結果的に相手GKのポープ・ウィリアムがDF福田心之助の進路を阻んだとして、退場が命じられた。

ここで右サイドバックの福田をセンターバックのポジションから全力疾走で追いかけて、カウンターに厚みをもたらしたのが宮本だった。

「シン(福田)にはチョンッと横に出していいよと走っていたので。あれがレッドじゃなくて、自分が決められていれば、また違う流れだったのかなと思いますけど...タラレバなので。シンはよく走ったと思います」

そう振り返る宮本は対人の守備でA・ロペスなど、横浜が誇るアタッカーを止めるだけでなく、積極的な声で京都の選手たちを鼓舞した。そのことについて聞くと、「曺さんに送り出される時に、お前がディフェンスリーダーとなって、チームコントロールしてくれっていうのを言われたので」と答えた。

大卒3年目、まだ24歳の宮本ではあるが、浦和からベルギー2部のデインズで武者修行した経験があり、年齢に関係なく発信力を備えている。後ろで身体を張るだけでなく、その声が最後まで諦めずにチームが戦う後押しになったことは間違いない。

「一人ひとりが自分の役割だけじゃなく、本当にいろんな人の分までやろうって、助け合おうっていうのを外から見てすごく思いましたし、中で一緒に戦っても、そう思うシーンが多かったので。本当に出ていた選手たちは素晴らしかった」

チームメイトを称える宮本だが、ここからスタメンでピッチに立つために、代表ウィークの中断期間も、トレーニングから仲間たちと切磋琢磨していく心構えはできている。

浦和で怪我からの試合復帰を目ざすMF大久保智明から連絡をもらったという宮本は、ベルギーで1部昇格を期すデインズにも刺激を受けて、京都での主力定着を狙う。

アピアタウィアが出場停止となる次節の東京V戦は引き続き、センターバックで起用される可能性もあるが、チームを後押しする熱いプレーに期待したい。

取材・文●河治良幸

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