ヤギで除草、ミルクで特産品…広がる夢 兵庫・上郡町地域おこし協力隊員 岡部さん 脱サラし飼育挑戦

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 「メエ~」。牧歌的な山間部に、草をはむヤギの鳴き声が高らかに響く。「性格がおとなしく、どこか自分に似ている」と、昨年生まれた子ヤギ3匹をなでる。

 兵庫県高砂市出身。臨床検査技師資格を持ち、大手製薬会社勤務時代、休日は乗馬セラピーなどのボランティア活動に参加し、動物とのふれあいが人を癒やす効果に魅了された。馬や牛に比べ、飼育しやすいヤギを飼いたいとの思いが募って44歳で脱サラを決意。千葉県のヤギ牧場で1年余り、約60匹の飼育を体験してノウハウを学んだ。

 ヤギ飼育に適した広い土地を求めていた時、同県上郡町の田園風景が気に入った。昨年、町の地域おこし協力隊員となって関東から移住し飼育を始めた。町内のイベントで、ヤギは子どもたちからお年寄りまで大人気だ。ただ協力隊の任期は3年。すでに1年が過ぎ、ヤギは2匹から6匹に増え、まもなく1匹が出産を予定。2年後は活動費補助も切れるため、ヤギで収益を上げるため必要な「第1種動物取扱業」の届け出も近く行う。

 昨年6月からは土地を借りて周囲に柵を立て、来場者が触れ合える飼育小屋を併設した牧場を手作りしている。ミルクを搾り、プリンやケーキ、チーズなどの特産化を目指すほか、希望に応じて派遣して雑草を食べさせる「ヤギ除草」や、ふんを堆肥に活用する試みも自宅の畑で試行を重ねている。

 「ヤギでの地域活性化策はたくさんある。手の届く範囲で管理し、無理せず飼育を続けたい」と、ヤギのように優しい目の奥に情熱をのぞかせる。(豊田 修)

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