<6>悩み共有、つながり生む 親にとっても居場所 希望って何ですか

「めいめい」で資格勉強に励む智美さん(手前)。子どもだけでなく親たちも自分の時間を過ごせている=3月上旬、宇都宮市

 3月上旬、夜。宇都宮市内の一軒家で、夕食のちらしずしを食べ終えた子どもたちがスタッフとともに遊び部屋へ駆け出していく。

 食器を片付けた長男(3)を見送った母智美(さとみ)さん(28)=仮名=が、こたつにテキストを広げ電卓をたたき始めた。母子家庭で子育てしながら税理士の資格取得を目指している。

 「家だと子どもと一対一で、勉強時間が取れない。ここでは安心して任せられるから、自分のことに集中できます」

 智美さんが利用するのは、同市内の親と子どもの居場所「めいめい」。経済的貧困の要因となり得る、人とのつながりや体験機会に恵まれない「関係性の貧困」解消を目指す、誰でも利用できる公設民営の5つの居場所の一つだ。

 親たちは談笑したり、読書したり思い思いの時間を過ごす。日によっては他のお母さんが資格勉強する姿も見られる。ここは、親の憩いの場でもある。

    ◇  ◇

 仕事と家事で手いっぱい、県外出身で頼り先がない-。利用者の背景はさまざまだが「『一人じゃない』ということを感じてほしい」と運営責任者の袖山千歳(そでやまちとせ)さん(25)は語る。

 大切にするのは「受け入れること、認めること」。例えば子どもの成長はわずかでも見逃さずに伝え、喜びを分かち合う。親は自分の子育てを褒められる機会が少ないからだ。

 「今日は『ごめんなさい』が言えた」「宿題で100点取れるなんてすごい」。保育現場の経験者や子育てを終えたお母さん、大学生など多様なスタッフが親と一緒に子どもを見守る。居心地の良い環境を整え、悩みを打ち明けやすい関係づくりを目指してきた。

 2022年9月の開設から約1年半。親同士のつながりも深まってきた。

 「情報共有できるのが助かる」と話すのは、母子家庭で2人の小学生を育てる香(かおり)さん(28)=仮名。他の親との関わりの中で子ども食堂などの存在を知り、頼る先を広げた。食費を浮かせられ、アルバイトで生計を立てる生活が少し楽になった。

 「イヤイヤ期がすごくて…」「学用品は何をそろえればいいの?」。めいめいでは、親同士が悩みを共有し合うことが日常風景。家族ぐるみで出かけるなど、支援者の手を離れ支え合う好循環も生まれている。

    ◇  ◇

 「こういう場所があることを多くの人に知ってほしい」。香さんは一人で子育てに悩んだ自身の経験から、自宅にこもりがちな近所の母親など、気になる人を積極的にめいめいへと誘う。

 現在、常時利用は5~7世帯。スタッフはSNSなどを活用した情報発信で利用者増を図るが、現状は親同士の口コミが頼みの綱だ。

 「まずは居場所での人のつながりを増やしたい」と袖山さん。地域で家庭を支える取り組みは、緒に就いたばかりだ。

© 株式会社下野新聞社