「赤紙」のパン店再起 七尾駅近くのフレンド 廃業覚悟も2カ月で修理

営業再開に向けて準備を進める啓さん(左)と誠さん=七尾市南藤橋町

  ●名物・玉子パン21日復活

 能登半島地震で店舗が損壊したJR七尾駅近くのパン店「フレンド」が21日、営業を再開する。オーブンも壊れ、建物に貼られた「危険」を示す赤い紙に一時は廃業を覚悟したが、再開を望む常連客の声を受けて再起を決断。約2カ月で修繕を終え、名物「玉子パン」を店頭に並べる。店主の竹本啓(ひらく)さん(76)は「お客さんに早く食べてほしい」と生地をこねる手に力が入っている。

 啓さんが妻市子さん(70)と七尾市南藤橋町にパン店を開業したのは1978(昭和53)年。店名のフレンドは、パンが友達のような身近な存在になってほしいとの願いを込めた。近くにある七尾高の生徒や教員にも40年以上親しまれてきた。

 啓さんが関西で修業時代に教わった玉子パンは、七尾のご当地パンとして浸透。ボリューム満点のサンドイッチや塩パンも人気を集め、午前6時の開店から3~4時間で完売してきた。

 元日の地震で2階建ての店舗はコンクリートの基礎が一部割れ、外壁が崩れた。建物全体が傾いて扉が開閉できず、パンを焼くオーブンもひびが入るなどした。

 「店を畳むしかない」と廃業が頭をよぎった啓さん。ただ、営業再開を望む客は多く、金沢市で美容室を経営しながらパン店を支える長男誠さん(41)が背中を押した。

 1月24日に修繕工事に取り掛かり、2月下旬には断水も解消、19日までにオーブンや水回りの修理も完了した。この先、いつまで店を続けられるか不安がない訳ではない。それでも啓さんは「腕がなまっていないか心配やけど、玉子パンを食べたい人がいるならやるしかない」と話した。

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