甲子園1号出た! 高校野球・新基準「飛ばないバット」 変わる戦略、安打出にくく 練習に竹製バット注目

直径が細いバットで打撃練習をする立正大淞南高の選手=松江市大庭町、同高

 高校野球は、今春の選抜大会から反発力を抑えた新基準の金属バットに完全移行し19日、ホームラン第1号が出た。「飛ばないバット」の導入は、これまでの戦略や指導方針に大きな影響を与え、高校野球のターニングポイントになる可能性もある。

 新基準バットは、近年の「打高投低」の流れに変化をもたらしそうだ。

 新たなバットは打球速度が遅くなり、安打が出にくくなることが予想される。おのずと、得点も入りにくくなるため、島根中央高の和田誉司監督は「これまでは3点取られても5点取れば良いという考え方だったが、今後はそうはいかない」と戦略を見直す必要性を実感する。

 長打も少なくなるため、バントやヒットエンドランを多用する「つなぎの野球」が重視されることになりそうだが、得点するには従来より細くなったバットで確実にミートする力が求められる。昨夏、夏の甲子園に出場した立正大淞南高では、ミート力向上を目的に直径が短いバットを使った打撃練習を続けている。太田充監督は「バットが変わっても、打てるようになるため」と練習の理由を説明する。

 打った時の感触が新基準バットに近い竹製バットに注目したのは島根中央高。1本数千円と安価なこともあり、昨秋から竹製のバットでバッティング練習をスタート。大学や社会人野球では、竹製バットに近い木製バットが使われていることを踏まえ、和田監督は「高校を卒業して野球をすることになっても、竹バットで練習した経験は生きる」と話す。

 打ち損じた内野ゴロやフライの処理が増えることが予想されるため、打撃だけではなく守備の重要性も増す。島根県高野連の山崎慎司専務理事は「今までと打球音は同じでもフライが伸びないので、落下位置の予測が難しくなりそうだ」と話す。投球に関しては、新基準バットはわずかでも芯を外すと飛距離が大きく抑えられるため、打者の手元で曲がる変化球がこれまで以上に有効になりそうだ。

 各校が手探りながら対策を進める中、関係者が注目するのが新基準バットが初めて使われる今春の選抜大会。出場校が使用するバットのメーカー、外野の守備位置、投手の配球など、あらゆる点が自分たちの戦い方の参考になるためだ。

 島根、鳥取両県からは春の選抜大会に出場するチームはなく、球児が新基準のバットを公式戦で使うのは春の県大会からになる。高校野球の一つの転機にもなりかねない新しいバットでどう戦うのか。準備してきた球児たちの取り組みが問われることになる。

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