初球に滅法強い大谷、ダルビッシュは追い込んだらスプリッター勝負?ついに実現する「日本人頂上対決」の注目ポイント<SLUGGER>

2024年のMLBは、アメリカに先んじ、韓国で幕を開ける。まずは日本時間3月20日の開幕戦で新たな一歩を踏み出す大谷翔平(ドジャース)と、2年ぶり4度目の開幕投手を務めるダルビッシュ有(パドレス)の対決が大いに注目を集めるはずだ。

ともに日本ハムで背番号11を着け、大谷にとって「小さい頃から見てきて大好きな投手」であるダルビッシュ。そのダルビッシュも、かつて大谷について「何年か後にメジャーで待ってるわ」と語るなど、対戦を待ち望んでいた。昨年のWBCではともに頂点をつかんだ2人は、直接対決でどのような勝負が繰り広げるのだろうか。データを参照しながら見どころを探っていこう。

■狭い球場は大谷に追い風で浅いカウントは強打の可能性

今回の対戦の場であるスカイドームは、両翼90mとメジャーのボールパークと比較すればかなり狭い。これは間違いなく大谷に有利に働くだろう。

昨季の大谷はリーグ最多の44本塁打を放ち、全フライ打球における本塁打の割合を示すHR/FB31.2%は両リーグダントツだった(MLB平均は12.7%)。狭い球場でプレーすることで、この数字はさらに上昇する可能性がある。大谷に限らず、タイミングを崩された当たりでも、フェンスをギリギリ越えてホームラン……という場面は何度となくあるかもしれない。

大谷の仕掛けの早さにも注目したい。昨季は初球で打率.500、10本塁打、2球目以内に広げても.472、21本と、浅いカウントで驚異的な打棒を発揮している。こうした傾向は過去も同様で、対戦する投手は慎重にカウントを整えなければならない。

一方、MLB公式の分類で9球種を操るダルビッシュは多彩な攻め方を得意とする。昨季は最も多く投じたシンカーでも投球割合18.6%でしかなく、まさに相手に的を絞らせないピッチングが身上。大谷に対してどのように入っていくのか、初球からしっかり注目していきたい。■追い込んでからのダルビッシュの選択は?

浅いカウントで滅法強い大谷だが、2ストライク後は打率.180まで落ち込む。追い込めばもちろんダルビッシュが有利で、ここでもウイニングショットにどんな球種を選ぶか気になるところだ。

決め球として、スライダーを長く使ってきたダルビッシュだが、昨季は被打率.431、左打者相手には.476まで悪化していた。このスライダーの出来が、開幕戦のみならず今季全体のカギを握ると言っても過言はない。

その一方、スプリッターは被打率.175、空振り/スウィング率40.2%と持ち球で最高値を記録。やや制球の安定性を欠くためか、投げる割合は少なかったが、威力は抜群だ。

大谷が弱点とする真ん中より低めのボールゾーン(内外ともに打率.140以下)に投げこむであろうウイニングショットはスライダーかスプリッターか、それとも別の球種か。"魔術師"とも表現される稀代の投球術を拝むには、格好の対戦相手でもある。

大谷が出塁した場合は、足にも注目だ。近年はスプリントスピードにやや陰りが見られるが、昨季は成功率を改善させながら自身2度目の20盗塁をクリアした。対するダルビッシュは通算盗塁阻止率12.3%と低く、走者への警戒はあまり高くない。今春のキャンプで、大谷はベースランニングの練習に精力的に取り組んでいた。打者専念で盗塁数増加も期待できそうな今季、開幕戦から足でもアピールしたい。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。

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