「自分の時間がほしい」と言うと「俺と同じぐらい稼げ」 そんな夫の子育ては、休日に「子どもと昼寝する」だけ

公園で遊ぶ母親と幼児(本文と写真は関係ありません)

 国や自治体は少子化対策の柱に子育て支援を掲げる。少子化の背景には、ジェンダーギャップ(男女格差)があるとの指摘がある。性別による役割分業意識やイメージの決めつけは、出産や子育てにどう影響するか。鹿児島の今を探った。(連載「子育て平等ですか?かごしまの今」②より)

 「自分の時間が欲しい」。2人の未就学児を育てる鹿児島市の20代女性が訴えると、夫は答える。「俺が働いているから食えている」「俺と同じぐらい給料を稼げ」。仕事復帰も反対され、けんかになる。

 夫は休みの日に育児をすると言うが、子どもと昼寝をするくらいで女性にとっては「何もしていないのと同じ」。休日の外出はいつも家族一緒。一人になれない日々が続く。

 家計は夫が管理する。女性が自由に使えるのは月5000円にも満たない。息抜きに子育て支援施設に出向く交通費もままならず、自宅で過ごすことが多い。

 食事の準備、着替え、そうじ、洗濯、泣く子をあやし、体調を崩せば病院へ。朝から家事と育児に追われ気がつくと夜。子どもには本当はもっと落ち着いて、おおらかに接したかった。「つらい気持ちが大きくなりすぎた。かわいいはずの子どもと遊んでいても、感情が『無』になってしまう。どうしよう」と打ち明けた。

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 厚生労働省所管の国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が2022年に実施した「全国家庭動向調査」によると、平日の家事時間は妻が247分、夫が47分。平日の育児時間は妻が524分、夫が117分で大きく偏っている。

 横浜市立大の研究グループは23年、横浜市の1万世帯の夫妻(妻が20~39歳)を対象に家事・育児時間などを調べた。その結果、2人ともフルタイム勤務で子どもが産まれたり、人数が増えたりした世帯は、妻の労働時間が減り、家事・育児時間が増えた。一方、夫は変化がなかった。

 フルタイム勤務の女性は、家事時間が増えると「幸福度」が低下した。夫の家事や家事の外部化・自動化(週1回以上の総菜や食洗機、全自動ドラム乾燥機などの利用)が増えると、妻の家事時間は減った。研究代表の原広司准教授(国際マネジメント)は「男性が家事、育児をしやすい労働環境を整える必要がある。夫と妻で分担を話し合うことも大切だ」と指摘する。

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 3人の子どもを育てる県内の女性(39)は数年前、新学期を前に、小学校に提出が必要な書類を広げ「記入して」と夫に告げた。ほとんどの家事・育児を担っていた女性は、自身の仕事時間を増やしたいと考えていた。夫が業務量の少ない部署に異動したタイミングに、家事・育児の分担を提案した。

 例えば、ごみは決まった日に収集所へ出すだけでなく、家中からごみを集め、新しい袋もセットする。「名前のない家事」がたくさんあることから伝えた。

 今では、休日の買い出しや炊事は夫が担い、「母でも妻でもない自分の時間が増えた」と笑う。息子(12)にも「今から覚えた方がいい」と家事を教えている。

 家事代行やスーパーの総菜も積極的に利用する。「『家事をちゃんとやろう信仰』がまだまだ根強い。女性が家事を手放すという選択肢がもっと広がってほしい」

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