日銀がマイナス金利政策の解除を決めた19日、鹿児島県内では、利上げによる住宅ローン支払額の増加や資金調達の心配など先行きを不安視する声が上がった。預金利息の上昇は緩やかとみられ、低金利に慣れた預金者には恩恵とは映っていない。
夫と小学1年生の息子と暮らす出水市の女性(41)は、住宅ローンの計画をファイナンシャルプランナーに相談中だという。ローンを組めたら家を建てかえる予定で「利上げで支払額がどれくらい高くなるのか心配」と気をもむ。賃金と物価がそろって上がる経済の好循環を前提にした対応に「自分の給料が上がるまで時間がかかりそうなのに」と実態との乖離(かいり)を指摘した。
米の卸小売りを営む原田米店(薩摩川内市)の原田匠社長(46)は、「低金利で資金調達が助かっていた部分もある。政策転換をいいイメージには捉えていない」とこぼす。「すぐに大きく上がることはないと思うが、その時に備えて、売り上げを伸ばすしかない」と落ち着いて受け止める。
鹿児島の基幹産業である農業では、肥料や飼料など生産コストが増える一方、価格転嫁は進まない。南九州市で茶を生産する菊永法秀さん(48)は「農家は常に収入がある訳ではなく、事業資金を借りることも多い。茶価も以前のように振るわないし、少しでも金利が低い方がいい」と話す。
17年ぶりの利上げに「金利を意識したことがない」と明かすのは姶良市の無職女性(32)。低金利が続いているため「銀行に預けてもほとんど恩恵がない」との意識は変わらない。新NISA(少額投資非課税制度)などの運用で将来に備える。