北陸の地銀、金利見直し検討 日銀マイナス金利解除

  ●市場見極め、被災地の業況考慮

 日銀が19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決めたことを受け、北陸の一部地銀は今後、市場動向を見極めた上で金利の見直し検討に入る。能登半島地震で被災した取引先の業況なども考慮し、実施のタイミングを慎重に判断する方針。マイナス金利の解除後も日銀による金融緩和は続くため、ただちに個人や企業に対する影響はないとみられるが、大手行の動き次第では早めに金利を見直す動きが出てきそうだ。

 日銀の利上げは2007年以来17年ぶりとなる。

 北國フィナンシャルホールディングスの杖村修司社長(北國銀行頭取)は、預金金利や住宅ローン金利に関し「市場動向を見ながら、柔軟に見直しを検討する」とした。一方で、住宅ローンについては、能登半島地震の住宅再建のため、一部の優遇金利をさらに引き下げる考えを示した。

 富山、富山第一の両行も市場動向をみて貸出金利の引き上げを検討する。北陸銀行は金利の具体的な見直しについて「未定」とする。中澤宏頭取は「銀行にとっては貸出金利の上昇による収益上のメリットや預金流入が期待できる」とコメントした。

  ●「緩和策、役割果たした」植田総裁、金利0~0.1%に誘導

 日銀は、長期金利を低く抑えるための長短金利操作も撤廃し、21日から政策金利を0~0.1%とする。上場投資信託(ETF)の新規購入も終了する。今春闘の平均賃上げ率が33年ぶりの高さとなり、賃金と物価がそろって上がる好循環が強まったと判断した。約11年に及んだ大規模緩和策の正常化を始め、金融政策は歴史的な転換点を迎えた。

 植田和男総裁は会合後に記者会見し、大規模緩和策は「役割を果たした」と説明。今後は「短期金利を主たる政策手段とする普通の金融政策になる」と語った。

 日銀はマイナス金利の解除後も短期金利を低く抑えて緩和的な金融環境を維持する方針だが、金融機関が短期金利に連動する変動型の住宅ローンや企業の借り入れなどの金利を上げるかどうかが焦点となる。植田氏は「貸出金利が大幅に上昇するとはみていない」との認識を示した。

 マイナス金利の解除は、植田氏ら会合に出席した政策委員9人のうち7人の賛成で決めた。

 日銀は黒田東彦氏が総裁だった13年に大規模緩和策を始め、16年にマイナス金利政策を導入した。今回の会合までは短期金利をマイナス0.1%とし、長期金利を0%程度に誘導してきた。長期金利の上限のめどは1%としていた。

 長期金利の誘導目標と上限は撤廃したが、金利の急上昇を防ぐために長期国債の買い入れは続ける。国債を無制限に買い入れて金利を抑える「指し値オペ」の枠組みも残す。ETFと不動産投資信託(REIT)の新規購入は終了した。

 植田氏は、好循環の実現が見通せる状況になれば政策の正常化を検討する意向を示してきた。連合が15日公表した今春闘の平均賃上げ率が5.28%となり、日銀内で正常化開始の環境が整ったとの見方が広がった。

 ★政策金利 日銀などの中央銀行が景気や物価をコントロールする手段として使う短期金利のこと。誘導目標金利とも呼ばれる。好景気で物価が想定より上昇した場合、政策金利の引き上げ(利上げ)を実施して個人消費や設備投資を抑え、景気が過熱しないよう調整する。景気が悪く物価が下落している場合は引き下げ(利下げ)によって景気を刺激する。

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