F1の収益は約25%増加の一方、チームへの分配金はわずか5%の増加にとどまる。前CEOとのコンコルド協定交渉が一因

 2023年のF1の収益は32億ドル(約4812億円)を超え、このスポーツのビジネスがこれほどの伸びを享受したのは初めてであることが公式文書で明らかになったが、出場している10チームの分配金総額は前年から大きく変わっていない。最新のコンコルド協定によりスライド制が導入されているからだ。

 F1自身の発表によると、昨年の総収益は32億2200万ドル(約4844億円)で、前年の25億7300万ドル(約3869億円)と比べて25%近く増加した。さらに、営業利益も2億3900万ドル(359億円)から3億9200万ドル(約589億円)へと64%の大幅な増加を記録し、同社の事業戦略の効果を示した。

 しかし、各チームに分配される資金は収益の25%増加を反映していない。10チームに向けた分配金は11億5700万ドル(約1740億円)から現在は12億1500万ドル(約1827億円)となったが、わずか5%の増加にすぎない。

 なぜこのようなことが起きているのだろうか? それはすべて、チェイス・キャリーがF1のCEOだったときに、FIAおよび当時の10人のチーム代表と現在のコンコルド協定について交渉した際に、非常に抜け目のない動きをしたからだ。

2020年までF1のCEOを務めたチェイス・キャリー

 キャリーは、F1はバーニー・エクレストンの管理下にあった時代よりもはるかに多くの富を生み出すことができると信じており、20億ドル(約3007億円)という数字は、F1が長年追い続けたが叶えられなかった、特別な数字であることを認識していた。そこで、キャリーはチームの賞金を総収益の62.5%まで上げることを受け入れたが、その後、収益が20億ドルに達した場合、基本的に分配金に上限が設定される条項を追加し、各チームはそれを受け入れた。

 各チームはF1が20億ドル以上の収益を得ることは決してないと信じてこれを受け入れたが、今ではキャリーにいかにうまく信じ込まされたかということを分かっている。すでに2022年の収益は25億ドル(約3762億円)を超えており、分配金はほぼ同じ額で維持されていた。現在総収益は20億ドルの到達点を60%上回っているが、分配金はわずか5%追加されただけだ。各チームは、スポーツが生み出す追加の10億ドル(約1504億円)ごとにわずか5%の増額を受け入れることを受け入れた。目標が達成されることは決してないと信じ、その時点で入手可能なより大きなケーキの一切れを受け入れる方を望んだためだ。

 現在、各チームそしてFIAも同様に、次のコンコルド協定に向けた契約変更を望んでいるが、F1は最も価値のあるカードを手にしているようだ。したがって、将来的により少ないものでより多くのものを手に入れることを受け入れることは考えにくい。

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