池田彰夫(宇都宮出身)が出演・制作の映画が最優秀賞 ロッテルダム国際映画祭 聴覚障害をモチーフに

下野新聞社を訪れた田中(左)と池田

 宇都宮市出身の俳優池田彰夫(いけだあきお)が出演、監督補を務めた映画「莉(れい)の対(つい)」が、第53回ロッテルダム国際映画祭(オランダ)で、メインのタイガーコンペティション部門の最優秀作品賞に選ばれた。俳優田中稔彦(たなかとしひこ)の初監督、初脚本作品。同映画祭はカンヌ、ベネチア、ベルリンの三大映画祭に次ぐ規模とされる。新進気鋭の監督が対象の同部門で、日本作品の受賞は10年ぶりの快挙だ。

 舞台を中心に俳優活動を行っている池田は、舞台の仕事を機に田中と意気投合し、10年来の友人だという。

 映画製作のきっかけは2020年、新型コロナウイルスの感染拡大で舞台活動が制限される中、2人が始めた動画投稿サイト「ユーチューブ」での動画撮影だ。ショートフィルムの撮影スタッフから、聴覚障害のあるカメラマンに筆談を交えて撮影してもらったエピソードを聞いた。池田自身も突発性難聴を経験して聞こえにくいことがあり、田中は「自分にとっては身近な話題。これらをモチーフに映画を撮ってみたかった」と振り返る。

 2022年1月に田中が脚本を書き始め、2週間後には北海道の雪山での撮影に挑んだ。映画撮影は初めてだったが、キャストは全てオーディションを経て決定。聴覚障害者の関係団体などへの取材を重ね、アマチュアスタッフとともに約1年かけて製作した。

 物語の舞台は東京と北海道。聴覚障害のあるカメラマンと、自分の存在に希薄さを感じている女性の出会いをきっかけに、2人と取り巻く人々との関係の変化を映し、人間のもろさと自然の美しさを対比するように描いている。

 映画祭には主要スタッフ、キャストが現地入り。同部門受賞作として紹介されると、喜びを爆発させた。池田は「2人だけでは絶対にここまでたどり着くことができなかった。たくさんの人たちの期待に応えることができてうれしい」と話す。

 映画は5月31日、東京・テアトル新宿での上映が決まり、全国で順次公開される予定。すでに次回作の製作に取りかかっている田中は「カンヌを目指したい」と意欲をみせる。

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