「奇跡起きた」…大水害でズタズタになったJR肥薩線復旧へ 駅無人化、観光列車廃止の地元に喜び広がる

〈資料写真〉線路の土台部分が流出し、傾いたまま放置されるJR肥薩線の線路=熊本県球磨村(2023年7月撮影)

 豪雨被害で2020年7月から運休が続いている肥薩線(吉松-八代間)の鉄道復旧方針が明らかになった19日、吉松駅のある鹿児島県湧水町では「奇跡が起きた」「にぎわう姿に戻したい」などと歓迎の声が上がった。JR九州が復旧に慎重だったこともあり、同町は「大きな前進」と期待した。

 「被害が大きく費用も膨大なので、完全復旧は正直なところ諦めていた」と明かすのは、吉松駅隣で食堂を営む永野龍郎さん(72)。22年3月に駅は無人化され、23年9月には吉松-人吉間を走っていた観光列車「いさぶろう・しんぺい」もなくなった。「若者を中心に駅前の活性化に努めるが、鉄道利用者がいないことには始まらない。観光列車も一緒に復活を」と願った。

 スイッチバックやループ線、日本三大車窓に数えられる絶景など、魅力が多い路線。県観光連盟の橘木宏幸専務理事は「熊本から霧島へ直接足を運べる交通手段であり、観光県鹿児島を支える重要なルートの一つ」と話す。

 町内の史跡や歴史を案内するボランティアガイドでつくる「湧水汽車(わくわくぽっぽ)会」の大重忠文前会長(77)も「肥薩線は不通が続いているので紹介しづらかった。また説明できると思うとうれしい」と喜ぶ。

 熊本県とJR九州、国の3者は27日にも検討会議を開き、鉄路復旧で基本合意する見通し。検討会議にオブザーバーとして参加する鹿児島県交通政策課の福島正敏参事は「今は議論の推移を見守っている」と話す。湧水町の池上滝一町長は「えびの市も絡む話なので宮崎も含めた3県での連携を密にしてほしい。われわれも日常利用の促進などについてしっかり協議していく」と話した。

〈関連〉2023年9月、県内ラストランとなる「いさぶろう・しんぺい」号を出迎える霧島高校生ら=霧島温泉駅

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