3000キロ走って「アルパカの地上絵」描く GPSランナー志水さん、ペルーで人類初の挑戦

約3千キロを走って描く予定のアルパカ(志水直樹さん提供)

 衛星利用測位システム(GPS)を活用して走りながらアプリの地図上に絵を描く「GPSランナー」の志水直樹さん(37)=兵庫県西宮市=が4月、南米ペルーでアルパカの「地上絵」づくりに挑む。約90日間をかけて砂漠や山脈など計3千キロを走る。無謀ともいえる試みだが、志水さんは「人類の初挑戦と思うと楽しみすぎる」と目を輝かせる。(池田大介)

 志水さんは2019年4月にプロのGPSランナーとして活動を開始。走行距離は約1万2500キロに上り、1300点以上の作品を生みだしてきた。制作方法は、ランニングアプリを使って走りながら地図上に経路を記録し、一筆書きのように文字や絵を描く。フェイスブックやインスタグラムでは、阪神タイガースのトラや「謹賀新年」の文字を描いた作品などを発信している。

 きっかけは16年1月10日に参加した西宮神社の「福男選び」だった。待ち時間に地図を眺め、ルートを確認していると、神社周辺の道路に「西」の字が浮かび上がってきた。「ランニングアプリを使えば…」。翌月、ルートを練って走ってみると、地図上には「西宮LOVE」の文字が描かれていた。

 当時は小学校の教員として、脳性まひのある児童を担当。体の不自由な子でも一緒に楽しめるスポーツを考えていた最中で、競わない「GPSラン」に可能性を感じた。それからは月1回ほど、旅先でご当地の偉人や名産品などを描いて、フェイスブックで発信するようになった。

 18年2月、台湾東部でマグニチュード(M)6.4の地震が発生した。ボランティアで東日本大震災の被災地を訪れた際、台湾からの復興支援に感謝する地元の人たちの声をよく耳にした。3カ月後、ゴールデンウイークに台湾へ行き、「日本♡台湾」と描いてエールを送った。フェイスブックにアップすると、瞬く間に拡散され、現地メディアに大きく取り上げられた。「オリンピックに出られなくても、多くの人を感動させられるかもしれない」

 19年3月で教員生活にピリオドを打ち、「GPSランナー」として活動を開始。愛用するランニングアプリを広める公式アンバサダーにも就任し、飲食店のアルバイトをしながら全国各地を走って作品制作に取り組んだ。

 順風満帆でスタートしたが、約1年後、新型コロナ禍に足止めされた。アルバイト先が休業し、あっという間に貯金が底を突いた。思わず自宅を飛び出し、「SOS」の文字を描いた。「ラン フォー スマイル」をモットーに走ってきた。弱音を吐くのは自分らしくないと思い、「SOS」の作品には「しみず おにく すきです」と書き添えて投稿。すると全国を走る中で出会った友人から大量の肉が送られてきた。

 新しく始めたアルバイトの給料や新型コロナ対策の持続化給付金を元手にプレスリリースを刷り、テレビ局や新聞社に手当たり次第送った。反応は悪くなく、ゴールデンタイムの人気番組にも出演。自治体のイベントや講演会に招かれる機会も増えた。

 昨年、日本はペルーとの国交樹立150周年を迎えた。自身の活動が「現代版ナスカの地上絵」と呼ばれることもあり、世界遺産「ナスカの地上絵」があるペルーをキャンバスに決めた。

 4月初旬からスタートし、同国に多く生息するアルパカを描きながら炎天下の砂漠や最高で標高4600メートルの山脈を走る。過酷な道程に体がついていくか不安も残るが、自分が走っている姿を想像すると笑みがこぼれる。「誰もやってこなったことに挑戦して、その経験を子どもたちに伝えたい。完走した後に世の中がどんな反応するのかも楽しみです」

 公式サイト「GPS RUNNER GO PERU 2024」では、ペルーでの活動が終わるまでクラウドファンディング(CF)=QRコード=を募っている。

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