強制的なPTA活動どう変える? 長崎の小学校で改革 役職廃止や希望制…ポイントは「目的」

城山小育友会が主催した1年3組の学級懇談会=長崎市城山町

 「PTAの役員決めが強制的」-。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」にこの1年、小中学校のPTA活動に関する保護者からの投稿が数件寄せられた。強引な役員選出に不満を募らせる人がいる一方、活動見直しを評価する声も。PTAを巡っては、共働き家庭の増加などを背景に活動の負担を嫌う人が増え、全国的に改革の動きが出ている。近年、見直しを進めた長崎市立城山小育友会(一瀬佐紀会長)の取り組みを取材した。

■自主的に選択
 2月下旬の放課後、城山小1年3組の教室で開かれた育友会主催の学級懇談会。担任教諭が同席する中、保護者が1人ずつ、子の家での様子などを報告した。懇談会は学期ごとに開かれ、学級に2人いる懇談係の保護者が、当日の司会を担当していた。
 同育友会ではこうした役職、係を強制やくじ引きで決めず、それぞれの年間の仕事内容を示した上で、各保護者ができる役割を自主的に選択する方式で決定している。
 1年3組の学級懇談係を務めてきたのは看護師の石川薫さん(44)と主婦の田中櫻さん(41)。石川さんは「入学後の説明会で懇談会係ならやれるかなと思った。仕事をしていると会議などには出られないが『この中でやれることはありますか?』という感じだったのでハードルが下がった」。田中さんは「主婦なので役職をさせられるのかなと思っていた。義務だと負担がかかるが『やれる人がやる』と言われて気が楽になった」と振り返る。

城山小育友会の「改革」のポイント

■負担を減らす
 同育友会でも、以前は役員や学級ごとの役職、係の負担が大きく、なり手不足が問題だった。2017~22年度に会長を務めた松本光生副会長(43)=現・県PTA連合会長=が中心となり、不要な活動や役職の廃止などを進めた「改革」によって、そうした状況が大きく改善した。
 「長年、前年踏襲の活動が続いており、役員の引き受け手が見つからないなど課題が多かった。負担を減らし、時代に合った活動に見直さないといけないと感じた」と松本さん。重視したのは活動自体を維持することではなく、活動ごとの「目的」を明確にして、それらの達成を維持することだった。
 会長就任1年目は従来の活動を行いながら問題点を検証。18年度から活動のスリム化などに本格着手した。同育友会ではそれまで、執行部の下に、校内活動を担当する学級部と副学級部、広報部、保健体育部、校外指導部の五つの専門部があったが、各部の活動をまとめたり不要な仕事をなくしたりして、学級部と保健体育部の他の3専門部を休止した。
 例えば、校外指導部では従来、防犯のため地域巡回活動などに当たっていた。しかし「今どきの子どもは外で、はめを外したりしない。必要性は下がっていたのに何となく続いていた」(松本さん)。代わりに地域住民による児童見守りの強化や、メールを使った登下校通知サービスの導入で防犯面を補完した。

■実情に応じて
 役職や係のなり手不足解消に向けては「1世帯につき1役」などの制度を経て、現在は希望する役割を申告した人が優先的に担える仕組みとしている。希望者がいない役割は「空席」になるが、これまでその例はないという。
 4年目以降は専門部ごとに部長・副部長・会計を任命していた三役体制を廃止し、執行部が部長を兼任することで役職の数も大幅に減らした。一連の改革により、保護者側の活動への理解、協力も得やすくなったという。
 松本さんの下で副会長を務め、会長を引き継いだ一瀬会長は「急に変えたら保護者も戸惑うが、緩やかに(改革を)進めたことで反発もなく、喜ばれている感覚はある」と話す。
 松本さんは現在、県PTA連合会長として、各組織の実情に応じた形で、活動見直しに取り組むよう県内のPTA組織に呼びかけている。児童数が多い城山小育友会では可能だった改革も、保護者数が少ない小規模校では実施が難しいなど、学校ごとに悩みは異なるからだ。
 「大事なことは活動の目的を明確にすること。目的を達成するためにどういうことが必要かを、ぜひみんなで話し合ってほしい」。松本さんはそう訴える。

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