ボールストライキング2位の岩井千怜、稲見萌寧に続き‟63位からの大逆転”でパリ五輪出場権獲得なるか

岩井姉妹の妹、岩井千怜が早速魅せた。2月29日から開催された開幕戦、ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントでいきなり優勝。今季も女子ゴルフ界で主役級の活躍を期待して良さそうだ。

優勝後のインタビューでは「パリ五輪に出たい」とコメント。

日本代表入りするには、世界ランキングにもとづくオリンピックランキング「15位以内」もしくは「日本勢上位2名」が条件となるが、3月18日時点の世界ランキングは51位で、日本勢7番手。

日本代表入り圏内まではまだ遠いが、パット巧者がショット力も携えている今、その可能性は徐々に高まってきている。

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2021年の東京五輪代表争いでは、2020年末時点で世界ランキング63位だった稲見萌寧が、2021年に入ってから代表決定までに5勝をあげ、大逆転で代表の座を勝ち取った。

千怜の昨年末の世界ランキングも63位。稲見の2020年末時点と同じである。

3月18日時点世界ランキング日本人上位

■ショット好調

千怜は今季これまでの3試合ではショットが好調。シーズンオフの取り組みの充実度を感じさせている。

ドライビングディスタンス順位とフェアウェイキープ率順位を合算したトータルドライビングが2位で、パーオン率が11位。2022年はトータルドライビングが21位で、パーオン率が28位。2023年はトータルドライビングが14位で、パーオン率が15位だった。

トータルドライビング順位とパーオン率順位を合算したボールストライキングは、今季が現時点で2位となっている。2022年は22位、2023年は9位だった。

プロ入り時点ではどちらかというと‟ステディ”と評されていたが、ショット力が向上したことで、攻撃力をつけてきている。

今季現時点では、パーセーブ率が90%を超えて2位となっているだけでなく、平均バーディ数が4.0を超えて3位となっている。

岩井千怜のショット関連スタッツ(3月18日時点)

■もともとパット巧者

千怜はもともとパット巧者。パーオンホールの平均パット数は2022年が11位、2023年が3位。1ラウンド当たりの平均パット数は2022年が20位、2023年が18位だった。

今季現時点では、パーオンオールの平均パット数が1位。1ラウンド当たりの平均パット数が13位となっており、昨季までよりも向上している。

そして、3パット率が今季現時点で8位。2022年が33位、2023年が19位で、この項目も明らかな向上が見て取れる。

このように得意のパットにも磨きがかかっていることは、パット数減だけでなく、ショットの精度にも好影響を与えているのかもしれない。

岩井千怜のパット関連スタッツ(3月18日時点)

■2021年の稲見萌寧並みに“圧倒”も

パリ五輪日本代表入りに向けては、畑岡奈紗や古江彩佳など、米ツアーを主戦場にする選手たちもライバルになるが、日本ツアーを主戦場にする千怜は、姉の岩井明愛や山下美夢有、小祝さくらなどの勝利を阻み、自身が勝利を重ねられるかがポイントになる。

千怜は昨季終了後、今季の目標は「日本ツアーで複数回優勝。そして、海外メジャーでトップ5」と、語っていた。

昨季、メルセデス・ランキング6位の千怜。ショットの精度が上がってパットがより入るようになっている今の調子を維持できれば、その目標は早い段階でクリアされ、2021年の稲見のような圧倒的な強さを見せる可能性がある。

世界ランキング63位からの大逆転劇。3年前と同じようなドラマが起きそうな雰囲気が少し漂ってきている。

22日から開催されるアクサレディスの初日はディフェンディングチャンピオンの山内日菜子、原英莉花とのペアリング。前の組には明愛がいる。後ろの組は山下、櫻井心那、鈴木愛となった。

パリ五輪代表入りのためには、勝たなければいけない選手が前後の組にいる。その選手たちに、プレッシャーを与えるほどのギャラリーが沸くプレーを期待したい。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。

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