3分間スピーチで人を結ぶ 波佐見の「朝飯会」が250回目 アイデア生む交流の場 長崎

波佐見を研究テーマに選んだ県立大生のスピーチに聞き入る参加者=昨年3月、波佐見町の833スタジオ(竹田英司さん提供)

 月に1度、年齢も職業も全然違う人たちが集い、それぞれが3分間スピーチをする長崎県東彼波佐見町の「朝飯会(ちょうはんかい)」が今月250回を数えた。朝食を味わい、人の話に耳を傾ける。そんなシンプルな活動が人と人を結び、まちの活性化や事業のヒントにもつながっている。
 1980年代、東京の異業種交流会「丸の内朝飯会」を参考に、陶磁器卸の深澤清さんが始めた勉強会が前身。現在は第1土曜の午前6時、波佐見町井石郷の観光スポット「西の原」に30~50人が集まる。
 経営者、大学教員、公務員、会社員、学生、リタイアした人、町長…。参加者の顔触れはバラエティーに富む。年代も10代から70代までと幅広い。地元だけでなく、長崎、大村からも常連が通ってくる。参加者は近況や趣味のこと、旅行の思い出、各業界のうんちくについて語り、午前9時ごろまで続く。
 この場でのスピーチが新たなまちづくりの視点を生み出すことも。2月、波佐見焼をドローンで運搬する実証実験が行われたが、昨年秋、佐世保のスタートアップ(新興企業)の代表が「ドローンで道を作りたい」と何げなく話したのがきっかけ。窯元や教育機関、行政が連携し、実証実験につなげた。
 「波佐見には包容力がある。町外なのに温かく迎えてくれた」。こう語るのは佐賀県有田町の有田まちづくり公社元取締役、高田亨二さん。活動に刺激を受け、9年前に「有田朝飯会」を立ち上げ、昨年100回目を迎えた。「居眠りする人はいない。みんなわいわいやって、毎回何かの発見がある」。一昨年には西海みずき信用組合の当時の理事長、陣内純英さんらが佐世保市の早岐地区で朝飯会の活動を始めた。

節目の250回目では、余興として元警察官が監修した暴力追放の寸劇が披露された

 記念すべき波佐見町の250回目の会には、JR九州元取締役や元長崎大学長の河野茂さん=同町出身=ら応援団も駆けつけ、盛況。「酒を一滴も飲まない会なのに、長続きしている。波佐見の地域資源」「コロナ禍でリモート会議が増えたが、ものを食べながら語らうのは原始的。目に見えないコミュニケーションの力」。参加者は口々に語り合った。
 会を主宰する西海陶器会長の児玉盛介さんは「雨が降ろうがやりが降ろうが、早起きして来れば、誰かがいる。それは特別なことではない。みんな自分のことを人に話したいんだよ」。いろんな人の思いを積み重ねて250回。児玉さんは「300回までは続けたいね」とほほ笑んだ。

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