<8>体験通し挑戦心育む 新形態「あそびのにわ」 希望って何ですか

たき火を囲んで子どもと話す金井さん(左奥)=3月上旬、日光市内

 3月上旬、日光市所野の別荘地にある子どもの居場所「あそびのにわ」。雪が舞う中、責任者の金井聡(かないさとし)さん(47)は小学2年の男子児童とたき火を囲んでいた。

 「どうしたい?」

 焼いた餅を食べながら、金井さんが児童にどんな遊びがしたいかを尋ねた。

 ここは2023年1月に開設された“新形態”とも言える子どもの居場所。食事の提供や入浴などの生活支援に加え、子どもの「遊び」を重視しているのが特徴だ。

 「幸い日光は自然豊か。放課後に刺激的な体験ができる」。金井さんは自然体験塾「キリフリ自然学校」の主宰者でもある。子どもたちは金井さんら「外遊びのプロ」であるスタッフと一緒に、近くの川や山に出かけていく。

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 利用登録する子どもは約30人。放課後になると常時2~10人が訪れる。「非日常」のイメージがある体験活動を、放課後という「日常」に落とし込んでいる。

 雪が降った3月上旬には、積もった雪にチョコレートソースをかけ、子どもたちがスプーンですくい取って食べたり、お菓子を雪に埋めて探したりして遊んだ。山や川に行かない日も、庭にある高さ2メートルほどの壁をよじ登ったり細いベルトの上を綱渡りしたりして元気に動き回っている。

 子ども同士が全力でじゃれ合い、見ようによってはけんかしているようでもすぐには介入しない。子どもたちはそこで、相手にけがをさせないくらいの「手加減」も覚える。

 金井さんは「個人的には単純に外で遊んだ方が楽しいと思っている。そういうことを言う大人がいてもいいでしょう」と笑う。

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 「遊びを通して成功と失敗の体験を繰り返すことで、失敗を怖がらずに挑戦する気持ちが芽生えてくる」

 子どもが自立する力を養うために、金井さんが必要と考える信念だ。

 貧困に置かれた子どもは、さまざまな体験が不足し自己肯定感が低いことが多い。「どうせできない」と思い込んでしまう子もおり、高校に進学しても勉強でつまずいて盛り返せず中退し、貧困が連鎖してしまうことが少なくない。

 さらに、金井さんは「遊びの経験が不足しているのは経済的に困窮する家庭だけではない」と指摘する。

 学童保育ではある程度の管理が必要で、自由に遊び回ることは難しい。家でもスマートフォンを見たりゲームをしたりして、外で遊ぶ経験は不足しがちだ。

 だからあそびのにわは、近くの小学校に通う子どもであれば誰でも利用できるようにしている。

 狙いはもう一つある。ここにいる子どもは貧困家庭に限らない。

 家庭環境でくくらないから「困難を抱え、支援を必要としている子どもも来やすくなるはずです」。

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