衝撃

 〈一人の客を乗せた箱状の座を棒でつり、二人以上の人が前後から担いで運んだ乗り物〉-過去の日本人によっぽど広く親しまれていたのだな…と、極めてとんちんかんな感想を新たにしている▲親近感を込めて仕事のパートナーやコンビの相手を呼ぶ「相棒」も、誰かの負担や借財などをそっくり引き受けることをいう「肩代わり」も「駕籠(かご)」に由来する言葉だ。昨日は朝から晩まで何度も聞いた▲衝撃が消えない。野球の米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の通訳を務めていた水原一平氏が「違法な賭博」を理由に球団から解雇された▲水原氏は、米メディアの取材に対し〈スポーツ賭博の負けが雪だるま式に膨らみ、相談して助けてもらった〉と語り、翌日になって〈彼は何も知らない〉と説明を一転させたとされる。万が一にも〈片棒を担がせる〉ことになってはならない-と考えたか。これも駕籠ワードだ▲ギャンブルの起源は古代にさかのぼるらしい。不確定な未来を予想し的中させる興奮、一獲千金のスリルや誘惑…その“魅力”もさまざまに説明されてきた。しかし▲大谷翔平の野球を間近で見届け続けることよりもドキドキすることや、その大谷選手から頼られることよりも達成感の大きな事柄をなかなか想像できずにいる。一平さん、なぜ。(智)

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