【JFAアカデミー福島完全帰還】(上) 未来のなでしこ育成 女子、13年ぶりJヴィレッジ寮に

楢葉町職員らに出迎えられ、笑顔を見せるアカデミー生

 東京電力福島第1原発事故の影響により静岡県で活動していた日本サッカー協会(JFA)の選手育成機関「JFAアカデミー福島」女子部門は21日、13年ぶりとなる福島県楢葉町での再開に向けて動き出した。中学生と高校生の約30人がJヴィレッジ(福島県楢葉・広野町)敷地内の寮に入った。男子は広野町に既に戻っており、“完全帰還”となった。アカデミー生が世界に羽ばたき活躍する姿が、復興に向けて歩む県民の活力になると期待される。

 「広いピッチが並び、素晴らしい」。静岡県裾野市からバスで到着したアカデミー生たちは目の前に広がるJヴィレッジの芝が敷かれたグラウンドに目を輝かせた。楢葉町職員から出迎えを受け、晴れやかな笑顔を見せた。

 新年度、女子部門は中学生21人、高校生19人の計40人が在籍し、男子部門は中学生が所属する。難関の実技試験を通過し、高い能力を備えた全国の実力者ばかり。女子は東日本大震災で損傷した寮の改修を終えたことなどから、拠点を移した。

 女子は22日から練習をスタートさせ、4月8日にアカデミーの入校式を迎える。中学生は楢葉中、高校生は広野町のふたば未来学園高に通いながら、サッカーの英才教育を受ける。体力や技術、戦術を身に付け、世界の舞台に立つために必要な語学力や国際感覚も培う。

 福島市出身で4月に中学2年になる渡辺優奈さん(13)は、天候に左右されない全天候型練習場などを備えた環境に喜びの表情を浮かべた。アカデミー女子は現在、U―15(15歳以下)の高円宮妃杯で2連覇を成し遂げている。DFとしてさらなる成長のために、万全のトレーニングが欠かせない。「必ず優勝し、古里の人に活躍する姿を見せる」と誓う。

 アカデミーは女子日本代表「なでしこジャパン」の中軸を担う人材を数多く輩出してきた。パリ五輪切符を懸けた2月のアジア最終予選・北朝鮮戦にはDF北川ひかる(26)=INAC神戸=ら5人が選出。負傷離脱した白河市出身のMF遠藤純(23)=エンゼルシティー=も出身者だ。アカデミーのメンバーは、先輩に続こうと切磋琢磨(せっさたくま)していく。

 JFAの田嶋幸三会長は12日に内堀雅雄知事と県庁で会談した際、「なでしこジャパンが、パリ予選を突破できたのはアカデミーのおかげ」と強調。福島県への帰還を機に「県などと連携し、素晴らしい歴史を加えられるように努力していきたい」と力を込めた。

 山口隆文監督は21日、報道機関の取材に「世界に通用するエリートを育成し、福島に元気を与えたい」と決意を示した。

※JFAアカデミー福島 2006(平成18)年に男女の中高6年間のエリートサッカー選手育成機関として開校した。全寮制で、男子は広野町、女子は楢葉町で活動。東京電力福島第1原発事故を受け、男子は静岡県御殿場市、女子は裾野市に拠点を移した。男子の対象は現在、中学生に変更しており、2021(令和3)年度の入校生から段階的に広野町に戻した。女子はアジアサッカー連盟(AFC)のエリートユーススキームによる最高ランクを獲得した。

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